NY・Sentimental

「カレンさん。あなたもワインをどうですか? もう少し食べられたら?」
「すみません。わたし、就業中なものですから……。元村専務と違ってまだまだ下っ端ですもの。自由にはなりませんわ。それにもうランチを頂いた後でして」

もう三時近いじゃない! 

全く、専務がこれじゃ社員にしめしがつかない。
食べてばかりいないで早く契約の話をしてよ! 
元村専務のグラスにワインを注ぎながら、たぶん引きつっているムリムリの笑顔を浮かべる。

「まあまあ。せっかくカレンさんが珍しくわたしと二人で会うことを了承してくれたんだ」

妻子だっているでしょうに。
こんな自分の娘みたいな年齢の女と食事をして喜んでいるなんて、将来、こんな男とだけは結婚したくないわね。

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