NY・Sentimental
今、目の前で同じことが起こっている。

「カレン、ごめん……」
彼はウエディングドレス姿のわたしに小さく謝った。
神父様の前で向かい合って、今、まさにわたしと彼は指輪の交換をしようとしている。

そこに向かって、つかつかとよどみない足取りでバージンロードを歩いてきたのはわたしのよく知る女性だった。


彼女はなぜかウエディングドレスを着ている。
教会の椅子いっぱいに座った仕事仲間や友人たちは、みんなあっけにとられてただただ彼女を見つめ続けた。

そしてわたし達のまん前までやってきた彼女は、彼に向かってためらいもなく左手を差し出した。
ちらりともわたしを見ずに、彼は彼女の薬指に指輪をはめた。

わたしの指のサイズにあわせてあつらえ、わたしの左手の薬指に収まるはずだったプラチナの指輪を……。
そして二人は「卒業」の映画さながら、手に手を取ってバージンロードを逆に走り始めた。


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