NY・Sentimental
「なんだかずいぶんな格好よね。スーツで行ったほうがマシなんじゃない?」

「いいよそれで。可愛いよ」

「可愛いって、二十五の女に言う言葉じゃないわよ」

「だって可愛いよ」

「もうっ」

セイジの私服もかっこいいよ、と、わたしは照れて言えなかった。


オリーブグリーンのTシャツも上に羽織ったナイロンパーカーも素敵。

ジーンズも似合っている。


二人でショップに行く途中、道路の造りが特に悪い場所にかかると、セイジがそっとわたしの手を握ってきた。


照れた横顔。

数時間前のあの野生動物のようなセイジは、何かが乗り移っていたのかと、思ってしまう。

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