NY・Sentimental
4.◇something borrowed .◇ 誠司
朝起き、無意識にベッドの隣を探っていた俺は、そこが無人だったことで、目が一気に覚めた。
ベッドの隣が無人なんて当たり前なのに、もうそうじゃないほうに順応してきているのか俺は。
いい匂いがした。
コンクリートの打ちっぱなしにステンレスの無機質なキッチン。
寝室のドアから少しだけ見えるそこに、俺の長すぎるトレーナーを着てカレンが立っていた。
昨日までと同じ場所だとは思えないな。
こういうのが幸せというものなのかな。
結婚するって、こういうことなのかな。
一度は女性不信に陥りかけていた俺だけど、そんな俺を救ってこういう光景を見せてくれたのは、今は東京に住むまだ大人の部類には入らない少年と少女だ。