NY・Sentimental


持っていた書類を豪快に床にぶちまけながら、わたしまで一緒に転倒するハメになった。

わたしは十一センチもあるヒールを履いているんだし、自分の容量とわたしの容量を比べて欲しい。

「何をするのよっ」

書類が豪快に舞って、わたしの上にひらひらと何枚も何枚も降り注ぐ。
それをセイジはひとつひとつ、長くて血管の目立つ指先で摘み取りながら、笑う。

「僕ばかりが悪いわけじゃない。カレンがそんな高い靴を履いてるのも悪い。人の多い場所だと危ないよ」

柔らかい、子供を諭すような笑顔を浮かべながらそうささやく。

毒気を抜かれるとでも言うのか……鋭かったり優しかったり、本当に掴みどころのない男だな、こいつ。
知らず知らずのうちに苦笑いがもれる。



< 25 / 351 >

この作品をシェア

pagetop