NY・Sentimental

◇◇◇


「いやぁ。また日本人の方にこちらでお会いできて、一緒に仕事ができるかと思うと嬉しいですよ。この歳になると、どうも望郷の念がね」

五十がらみの毛の薄い気のいい親父、という感じの日系企業の専務がセイジを見て嬉しそうに笑う。

息子みたいなものなのかしらね。
中心に生花が生けられた楕円のテーブルに、十人以上が座れる黒い革張りのソファを配置した役員専用の応接室。
うちの会社よりずっと小さいけれど、大事なお得意様だ。

小さい会社だからこそ、わたしたちみたいな若造に親子ほども歳の離れた役員が、こんな立派な応接室で会ってくださる。
大切にしなくちゃいけない取引先だ。


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