NY・Sentimental
それに俺にも、カレンと同じように金銭面を支えなくてはいけない人もいるんだ。


今はニューヨークを、本社を、離れられない。


大丈夫だよな? 


カレンにだって今は家のことがあるんだから、ここから離れるわけにはいかないはずだ。


「カレン……」


不安になるよ。


俺は人通りの途絶えた細い道路でカレンを強引に抱きすくめた。


イスタンブールに行きたい。


遠くに行きたいと思う人種がいるという話をするカレンは楽しそうなのに、どこか儚くて、俺の手をすり抜けて空気に溶けてしまいそうだった。


やっと、やっと探し当てた運命の(ひと)


「セイジ、人が来るよ」


「ここはアメリカだよ」

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