NY・Sentimental
わたし十一センチもある細いヒールの靴を履いてるのに、足をひねるどころか、どこにも打ちつけた場所はない。
セイジがわたしが転ばないように背中に素早く腕をまわしたからだ。
自分でぶつかってつかみかかったんだから、計算していなければそんな行動は取れないだろう。
ぶちまけた資料の中には最重要のものもあり、わたしの意識はあの時、ほぼすべてがそれに向いていた。
「早業だろ? 早業でボタンを外すヤツより、早業でボタンを留めるヤツのほうがよっぽど信用できる。そう思わない?」
そう言うと、ビルだらけのてっぺんに見える青空に向かって大きく伸びをした。
それから振り向いて不敵に笑ってみせる。
面白いじゃない。
わたしに戦いを挑むのね?
「これはわたしの服よ。わたしがどうしようと勝手だわ」