NY・Sentimental
柵の後ろに広がるのはシルバーグレーに輝くスカイスクレーパーの森。


理知的な君に、どうしてそんな簡単なことがわからなかったんだよ、カレン。


俺は君に会うために、運命に導かれてマンハッタンに来た。


それなのに、気持ちが通じ合ったとたん、俺を出し抜き煙のように消えていった。



会議中、食事中、人との会話中。


予告もなくフラッシュバックする君のあどけない寝顔や、無防備な笑顔。


もう俺は、数少ないプライベートな君の面影に押しつぶされて、へこたれそうだよ。


毎日が拷問だよカレン。


「青いなぁ、空」


空と海を隔てる水平線は、ただ銀色の光を放つだけで、その境はしごく曖昧だった。


イスタンブールを臨むブルガリアの海もこんな感じなのかな。

< 313 / 351 >

この作品をシェア

pagetop