NY・Sentimental
「へぇ、信じられないわね。あなた充分いい男よ? 社内でもけっこう噂なのよ?」


「最高の褒め言葉だよジェシー。”いい男”って言われるより”いい人”って言われることのほうがずっと多くてって、こんな話はいいんだけど」


「うん」


「社に入った頃さ、大学時代からつき合ってきた女と結婚しようと思った」


「あら早いわね。入社してそんなにすぐ結婚を考えるの? 日本って国は」


「彼女がしたいって言うから。今から思えば、俺が入社が難しいと言われていたこの外資系の会社に決まったからなんだよな。しかも初年度のスタートアップの売り上げが東京支社で一位だった。新人部門社長賞っていうのを取ったんだよ」


「あら素敵! セイジ、社長賞を取ってたの?」


「ああ、たまたまいい先輩の指導でな。運が良かっただけだ。じゃなきゃ無理だろう? 入社してすぐのことだぞ。まあ、だから、あいつは俺と結婚すればそれなりのレベルの生活が送れるとふんだんだろうな。早いうちに手を打とうとしたんだろ」


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