NY・Sentimental
「ふぅん」


身を乗り出して半分は興味本位で聞いてくるジェシーに、俺はため息まじりに昔あったことを話し始めた。


事の発端は、この結婚するはずだった女にある。


同級生のその女、当時の彼女とは大学で知り合って、三年の終わり頃からつき合い始め、その後卒業、俺はそのまま東京で就職をした。

それが今のこの外資系企業だ。


彼女は親の勧めで地元に戻らなければならず、東京からそう遠くない場所で塾講師として働き始めた。


近県とはいえ、俺たちは遠距離恋愛という形になった。


その頃から彼女が頻繁に結婚のことを口にするようになった。


入社間もない頃に結婚なんて自分ではまだ早いと思ったけど、真剣につきあっていたわけで、いずれするなら彼女がしたい時期にしてもいいんじゃないか、と決断した。


単純に俺と離れていることが不安なんだろう、可愛いところもある、なんて、おめでたいことを考えてもいた。
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