NY・Sentimental
「その男の子、Yumaは本当はAsakiが好きだったのね。全てを知って目が覚めた、ってわけなんだ。それにしてもいまだにエアメールがくるなんてAsakiもずいぶんセイジを頼ってるじゃない」


「日本は景気がずっと悪くてさ、朝希ちゃんの親は俺に支援を頼んできた。朝希ちゃんの音大の費用を借りたいと。日本の音大はすごく金がかかるんだよ」


「ああ、ピアノの道に進んだのね?」


「そうだ」

俺は、朝希ちゃんの音大の費用をすべてまかなっている。


向こうは借りているつもりで絶対に働いて返す、と言っているけれど、俺にしてみれば、どうしても辞退したい話だ。


今、朝希ちゃんは嬉々としてピアノを弾いているという結果はさておき、進路を変えざるをえないようなことを、俺は彼女にしてしまった。


しかもこの怪我はのちに尾をひくかもしれないものだ。


「セイジはAsakiの一生に責任を取ろうとしたのね? それで結婚を?」


「違うよ。見守っているうちに好きになっていた、と思っていた。今から考えると……正直よくわからなくなってきた」


その後知り合ったカレンに対する狂おしいような感情を、俺は朝希ちゃんに抱(いだ)いたことはない。

もっとこう、穏やかで、とにかく心配で、辛い目にあってほしくない。


「娘や妹に対する感情に近かったんじゃないの?」





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