NY・Sentimental
「わからないな……」

俺は結婚するはずだった女――あの事件のあと、とっとと姿をくらましてしまったー-との一件で、一時期完全な女性不信に陥っていた。


あたりまえだろう。


学生時代からまる一年もつき合って、人としてあれほど最低なことを平気でやってのける本性に気づきもせずに、俺は結婚をしようとしていた。


俺の女を見る目は一体どうなっているんだ! と、どんな女性を見ても裏があるんじゃないかと邪推するようになってしまった。


信じられるのが朝希ちゃんしかいなかった、と言ってもいい。


身を挺して好きな男を守るところを目の前で見た。


俺を恨むことも悠馬を恨むこともしなかった。


自分は身体に大きな故障を負ったのに、悠馬が正気に戻ったのを静かに喜び、黙って彼の前から去ろうとした。


悠馬は悠馬で、本当の恋はどういうものなのか、自分が本当に好きなのは誰なのかを悟った時には、相手に今さら気持ちを告げることも許されない状況になってしまった。
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