NY・Sentimental
「日本を離れるにあたってプロポーズしたの?」


「いや……。気持ちは伝えたけどしっかり振られたよ。悠馬と朝希ちゃんはまるまる四年、お互いに片思いをし続けて、結局俺がニューヨークを立つ直前にまたつき合い始めたんだ。だから用意してた指輪に出番はなくて、俺もふんぎりをつけるために指輪は空港のゴミ箱に捨ててきた」


「もう、なつかしい思い出なんだね、セイジにとっては。なんだかその二人のこと話す時は顔つきが優しいね。破談になった元彼女のことを話す時は剣呑まるだしなのに」


「そうだな。俺よりいくつも若いのに、こういうのが運命の相手なのかな、ってあの二人を見てて思ったんだよ。振られたのに清々しかったな」


「ふぅん」



「悠馬が相手じゃかなわないって気持ちがなくはなかった。四年もお互い想い続けたのに、贖罪に阻まれてどっちからも言い出せずに、さ。あの二人がまたつき合い始めるのって低いハードルじゃなかったと思うんだよ」


< 328 / 351 >

この作品をシェア

pagetop