NY・Sentimental

5.◇Something  old◇ 花連

「はい? あらジェシー! 久しぶりねぇ。え? 今? 今は事務所じゃないわ。えへへ。うらやましがるわよぉ? ボスボラス海峡を見渡す素敵なオープンカフェのお店で一息ついてるの。対岸にイスタンブールが見えるわ。もうニューヨークじゃ考えられないわよ。―――え? 店の名前? URL? いいけど、見たらばかばかしくなって仕事する気、なくすわよ? ――うん。もうちょっとここで海でも見てから戻るわ。え?なによぉ。わたしをサボらせる気?」



閉鎖になったままのイスタンブール支社の仮事務所、ブルガリアのブルカスという港町に来て二年がたつ。


この街にもだいぶ慣れた。


でもやっぱり憧れの街、イスタンブールに早く事務所が再開にならないかな、と恋い焦がれるような思いで、たまにわたしは商談帰りにこのカフェに来る。


トルコとの海峡に飛び出た岬の街、海を臨む二階建てのとても美しいオープンカフェだ。

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