NY・Sentimental
もう飛行機を操縦して空を飛ぶことはないけれど、若いパイロットの指導教官補佐として日々奮闘している。


とにかくパパの病状が安定してきたことで、うちの出費は減り、パパとわたしでローンを返すメドもたった。


もうすぐ卒業をするリラにもお金がかからなくなり、就職すれば逆にいくらか家にお金を入れてくれることにもなっている。


あろうことか、あの世間しらずのお嬢様ママまでが、家族の危機に近所のスーパーでパートをし始めたのだ。


一時期はどうなることかと思った真崎家も、今となっては、日本のことわざにある、雨降って地固まる、という状態だ。


四人が四人、家族の絆について深く考え、悩み、成長したのだと思いたい。



家族の金銭面が落ち着いたことで、わたしはゆったりとした気持ちで仕事をすることができるようになった。





ジェシーの電話を切って、彼女の言うとおりこの店のURLを彼女の携帯に送ってからも、わたしはぼーっと、青い帆布のパラソルを張った真っ白い建物の二階にあるオープンテラスから海を見ていた。


店は二階だけれど高台にあって、実際の二階よりももっと高い場所にあるテーブルの前にわたしは座っている。


お店にはお客が、わたしの他には地元のカップルが一組いるだけだった。









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