NY・Sentimental
「お嬢さん、席をご一緒してもいいですか?」
大型トランクを引っ張った若い長身の男がわたしの前に立つ。
逆光で顔がよく見えなかった。
わたしは陽の光を遮るように手をかざし、目の前の男を静かに見つめた。
そして、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「……どうぞ」
その男はわたしの前の席に腰を下ろすと、長い足を組み、おもむろに煙草を取り出して火をつけた。
左手の薬指には真新しい指輪が光っている。