NY・Sentimental
「神父さんは、寝ぼけてたんでしょうって話だった。そのくせ、誰のだかわからないトゥシューズが敷地内に転がってるのを見つけたって言うんだ。一応預かってるっていうから見せてもらったら、もうびっくりだよ」


やわらかく笑って、彼はトゥシューズを手早く裏返した。


トゥーシューズの底には、薄くて、もう目をこらさないと確認できないくらいの字で、漢字で、書いてあった。






花連――。


あの日、わたしはティアラを落とし、それを拾って後ろから声をかけてきた男性が怖くて走って逃げた。


あとで勝手に王子様、とか崇(あが)めていたけど、あの状況じゃ、どう見積もっても王子様より変質者の可能性のほうが高かったから。


教会の控え室にもどって、鍵をかけ、すごいスピードで着替えをした。

< 339 / 351 >

この作品をシェア

pagetop