NY・Sentimental
まったくどういう男なんだろう。
なるべく近寄らないようにしようと思うけど、なんと言ってもチームが一緒で、しかも今はわたしとセイジ、二人しかいない。
接触をさけるのは困難を極める。
それさえなければ、こんなに仕事を覚えるのが早くて使える優良物件はそうそういないというのに、惜しいことこの上ない。
ならばここはどうしても上司らしい態度でキッパリと命令し、こんなことはやめさせなくてはいけない、とわたしは息巻いていた。
このままでは上司としての面子が丸つぶれ。
だけど、もう何度もわたしはこの件ついて、けんもほろろにセイジに言い負かされている。
人前であんな勝手な屁理屈を押し通されたら、それこそわたしの立つ瀬がないというものだ。
セイジが一人になる時を狙うしかないだろう。
「セイジ、悪いけど、この輸出用トウモロコシ粉末の1966年のファイルを用意してくれないかしら?」
就業時刻がすぎてもセイジは大抵事務所にいる。