NY・Sentimental

ボタンを外そうとしたわたしの両手首をセイジが自分の両手で掴みあげ、背後の壁に押し付けてきた。

想定もしていない彼のこんな行動に、わたしはうまく反応してかわすこともできず、ただただ大きく目を見開いた。

「カレン、もっと自分の身を守ることを真剣に考えたほうがいい。聞かれたくない話であろうと、こんな人気のないところに男を呼びつけることが得策だとは思えない。あなたにとっては部下でも、実際俺の性別は男。そしてあなたは女性だ。わかるでしょ」

セイジがそれほど力を入れていないことは、余裕の顔つきがそれを如実に表している。
だけど、わたしは彼を振り払うどころか、腕に力を入れてもほんの少しも動かすことができなかった。

わたしは上司だ。
ここでは男女は関係ない。

「離しなさい。セイジ。上司命令よ」
「残念だったねカレン。もう就業時間はすぎた。しかもここは会社内でもない」
「え? 会社の地下じゃない?」

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