NY・Sentimental

自分に実害は全くない。

だけど、カレンが、ジョージを好きなのに俺を当て馬にするのことには、ひどく腹がたった。
オフィスにいるカレンは、まるであでやかな大輪の華のようだ。

金髪や栗色の髪が多い中、つややかな真っ黒い髪を大胆にしっかり巻いて、身体にぴったり沿った黒いスーツに高くて細いヒールの靴で、背筋を伸ばして立ち働く。
凛々しく美しく、だからこそ真実を知ってしまった今は抱きしめたいほどに痛々しい。

なにをバカなことを考えているんだ、と我にかえる。
ただ、謝りたいと、それだけは切実に願った。
カレンを、計り知れないほど傷つけたに違いないのだ。

傷口に塩を塗る、とはまさにこういう状態、そんなことをした俺を、カレンはどう思ったのだろうか。

< 64 / 351 >

この作品をシェア

pagetop