NY・Sentimental


敵意に満ちた目を一瞬ちらつかせ、それでもジョージはそれ以上何も言わず、ケイトとともにおとなしく帰っていった。

「気にしないで。あなたが予想以上に優秀だから、自分のポストを取られると警戒しているのよ。あれが典型的なニューヨーカーよ。覚えておくのね」
資料から視線を上げずにカレンが言った。

あの時、はからずも俺に(さら)してしまった女性という要素を、もう彼女はあれ以来ほんの少しでも覗かせることはなかった。
たまたまそこにいたのが俺だったんだろうけれど、俺だけに見せたのかもしれない表情。

自分の中でどう決着をつければいいのか戸惑うほど、脳裏にくっきりと焼きついている。


俺たちのフロアからどんどん人が引いて行く。
俺とカレンはプレゼンに向けての資料作りのため、もくもくとPCに向かって数字や文言を打ち込んでいった。


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