NY・Sentimental

気がつくとフロアには、俺達の他にはもう誰もいなかった。
窓の外に視線をやると、ニューヨークの長い日の入りが終わり、あたりは完全に夜の帳に包まれていた。


謝るのなら今だと思った。
深いため息とビジネスチェアーがきしむ音が聞こえ、大きく身体をまわしたカレンが今度は肘をついて眉間を揉んでいる。

何時間も続けて、二人とも夢中でPCと資料と格闘してきた。
疲れもするだろう。
俺も疲れた。

「セイジ、お茶飲みたくない?」
「はい?」
「お茶買ってきて。下のクイーンズカフェで」

目を閉じて大きく首を左右に倒して身体をほぐしながら、カレンが言う。
クイーンズカェというのは、このビルの一階に入っている深夜までやっているカフェチェーンだ。
わりと美味い。

「それも上司命令?」

謝るために多少なごやかな雰囲気に持っていこうとして、ちょっとおどけて笑ってみせた。


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