NY・Sentimental

「はい」

このニューヨーク本社でも、噂はあとから耳に入ってきた。
でも俺が最初にその話を聞いたのは、いきなり同じ日に現れたジョージとケイトの関係に疑問を抱き、日本に電話をした時だ。

「たいしたことないのよ。あんなくだらない男、もう忘れてるしね。だけど、同じチームだからセイジにまで余計な負担がかかるわね。今日みたいな……。もうしないわ。ちゃんと四人に仕事は割り振る」
「カレン」
「本当よ。ここまで重労働だと思わなかった」
「いや……」
「私情を仕事に持ち込む上司なんて最低もいいところだったわ。本当にごめんなさい」

カレンは上司である以前に一人の心を持つ人間だ。
この状況でこんなに冷静に、今日まで対処してきたことにむしろ頭がさがる思いだ。

日本の同僚の電話で知った。
結婚するはずだったのは、カレンとジョージ。
結婚式を挙げている最中にケイトが乗り込んできて、ジョージはケイトと手に手をとってその場をあとにしたのだそうだ。

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