NY・Sentimental
俺があんなことをした後も、カレンの俺に対する評価が変わったわけではない。
カレンは仕事でだけ俺を評価していて、人間として、まして男としては、全く評価の対象にはなっていないのかもしれないけれど、職場に私情を持ち込む女性ではないのだ。
「じゃあ、わたしはちょっとコーヒーを飲んでくるわね」
「俺も行くよ」
はじかれるように席を立っていた。
「そう? じゃあ一緒に行こうか」
さして興味もないように黒目がかった瞳で俺を見上げ、でも小首をかしげてカフェに誘うようなしぐさをする。
とっさの勢いだっただけにカレンより早く席を立ってしまい、見下ろすと、彼女の胸元のボタンがきっちりと留められていることに気づいた。