NY・Sentimental



準備期間に一ヶ月もかかった数社あわせてのコンペで、プレゼンは大成功し、俺達のチームは契約を一つ増やした。
俺とカレンが中心にはなったけど、あれから彼女は仕事をちゃんと四人に割り振った。

つまり、結局悶々としたまま謝りそこねたあの夜以来、俺とカレンは二人で残業をすることが極端に減ったのだ。
時間的肉体的疲労度を差し引いても、俺としてはカレンと二人でやったほうが、ずっとずっと気が楽だった。

おそらくは、カレンだってそうだったんだろうと想像される。
新婚のジョージとケイトを遅くまで拘束することに、気がねする気持ちが時折彼女の言動に表れる。

「やったわね。セイジ。これはかなり大きい契約。ライバル会社だって強敵で……、こっちのごたごたでもう、始める時は勝算はゼロに近いと思ってた」

たまたまジョージとケイトは席を外していた。

ジョージとケイト、二人への気兼ねだけじゃなく、俺と二人のほうがのびのびできる、というのがカレンの本心なら、こんな嬉しいことはないのに、なんてことをぼんやり考えていたらそう言われたのだ。

「俺もカレンのおかげでニューヨークに来て、こんなに早く契約が取れた」

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