NY・Sentimental
真新しいドレスの上にわたしの涙がいくつもぱたぱたと落ちていった。

衝撃が静かな哀しみに変わる頃、自分でもちょっと笑ってしまうような考えが浮かんだ。
もう必要のない、パニエの上にチュールを何枚も重ねたこのふんわりとしたウエディングドレス。

友達からはわたしがこんな甘いデザインを選んだことを、意外だと言われた。
胸の上が山形にカットされ、胸元も肩も腕もおおわない肌の露出の高いドレスだ。

素肌を見せることをよしとしない教会だから、式の間はこの上に取り外しの利くぴったりとしたボレロを着込んでいる。
一見すると手の甲までぴっちりとレースで包んだ一枚のドレスのよう。

わたしはボレロを脱いだ。
前髪でも整える目的なのか控え室に置いてあったよく切れそうな、シザーを手に取る。

< 8 / 351 >

この作品をシェア

pagetop