NY・Sentimental


「どう? セイジ。これで手を打たない?」

もうデスクについていた俺の前に、カレンがあいかわらずの高いヒールで腕組みをし、斜め四十五度の方向からこちらを見下ろしていた。
彼女の言葉の意味はすぐにわかった。
スタイリッシュな細身のスーツはいつものとおりだけれど、胸元のボタンが、今日は二つしか開いていない。

俺がひとつ開けることを推奨。
カレンはふだん三つ開けることに決めているらしい。
中間を取って、二つでどうだということか。
これで俺に、もうボタンを勝手にとめるな、と交渉しているというわけか。

まじめくさった表情でそんなことを言って、俺の前でポーズまで決めているカレンの態度がおかしくて、俺は軽くふきだし、それから短く返事をした。

「了解!」
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