トリップしたら魔王の花嫁⁉ ~勇者の生贄にされそうだったので敵の敵は味方と思い魔王に助けを求めたら本当に来ました~

『嫁』と『契約』

 ごく自然に手を差し出してきたギルに、触発されたといいますか。

「そう! それ!」

 恋人繋ぎをしたら、朗らか笑顔をいただきました。

「それって言うからには、これもシナレフィーさんたちがしてたんですね」
「二人で歩いてる時は、これかミアがシナレフィーの腕に掴まっているかのどちらかだな」

 あ、身に覚えのある二択。もっとも、昨日は普通にギルと手を繋いでいたけれど。
 てくてく
 知らない街なので、ギルに大人しく付いていく。
 でも幾ら知らない街でも、大きな目印は目に入るわけで。
 明らかに城から離れていっております。デート定番、「遠回りして帰ろう」を実行中なようです。

「私はまだ、ミアさんが腕に掴まっている方しか見てませんね」
「移動の時は、大抵そっちだな。手を繋いでいるのは、散歩とか歩くこと自体が目的な時が多いみたいだ」

 なるほど。だからシナレフィーさんたちの恋人繋ぎは、目撃できていないのか。今朝、廊下で会ったのも、朝食を取るために食堂までご一緒した時だったし。
 ミアさんがシナレフィーさんの腕に掴まって寄り添って歩く姿は、絵画のようだった。恋人繋ぎも是非見てみたい。

「にしても、あれな。最初は目を疑ったよ。昔からシナレフィーは束縛を嫌うから、精神的どころか物理的に自分を捕まえさせるなんて、考えられなかった」

 昔から……そういえば今日の朝食で、ギルとシナレフィーさんは幼馴染みだと言っていた。
 竜同士の幼馴染みか……付き合いが果てしない年月になっていそう。

「それなのに今は、あんなだろ。ミアが最優先になって。時々俺の用事も後回しにされるくらいだ。まあ、俺もサラに会って、あいつの心情がわかったけど」

 不意に、ギルが立ち止まる。
 他より道幅の広い通りに出ていた。城へと繋がる大通りだろう。

「サラはどうだ? 少しは俺を好いてくれているのか?」
「えっ……?」

 呑気に道の先を見ていた私は、いきなり落とされた爆弾に、ギルを振り返った。
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