トリップしたら魔王の花嫁⁉ ~勇者の生贄にされそうだったので敵の敵は味方と思い魔王に助けを求めたら本当に来ました~
『探索蝶ですね』
モグモグしている食人蔦の口に釘付けになっていた私の頭に、食人蔦たちとは違うテレパシーが届く。シナレフィーさんが発したもののようだった。
シナレフィーさんに目を向ける。
『一部の人間が使役する、失せ物探し用に飼育された魔物です。情報が伝達されたなら色が赤く変わるので、妨害は間に合ったようですね。妃殿下を探しているのなら、依頼主は恐らく勇者でしょう』
「カシムが?」
『妃殿下の契約は陛下が強制的に外しましたが、向こうは縛られたままです。勇者は、貴女を殺して次の嫁を用意しようと考えるはずです』
「結局、命は狙われるわけですね……」
カシムが『勇者の嫁』に拘るのは、やはり森にあった剣を抜くためだろう。
ギルはあの剣のことを『竜殺しの剣』と呼んでいた。ギルもシナレフィーさんも、その竜だ。これほど不穏な名称もない。
(そもそも何で森に放置してあるんだろう?)
あれでは勇者に持って行って下さいと言わんばかりだ。こちらで回収出来ないものなんだろうか。――うん。今度、ギルに相談してみよう。
「食人蔦さんたち、守ってくれてありがとう!」
『あいよー』
ワシャワシャ
『リリ。大きめの帽子を妃殿下に渡して下さい』
「はいですっ」
シナレフィーさんの指示に、リリが亜空間から帽子を取り出す。
おお。これが大きさも重量も無視してアイテムを持ち歩ける、カラクリなわけですな。
ポーションを九十九個なら鞄に入らないこともないかもだけど、RPGは大量の武具に、場合によっては丸太なんかも持ち歩いちゃうからね。ここでの『鞄』は、亜空間に繋がっている入口を意味するに違いない。
「どうぞ、サラ様」
ぽすっ
リリが私に帽子を被せてくれる。
『勇者が探しているなら、妃殿下の髪の色は目立ちます。それで隠していて下さい』
「わかりました」
リリからヘアピンも受け取り、帽子を固定する。
「それじゃあ、サラさん。行きましょうか」
準備万端となったところで、頭上から声が掛かった。ミアさんは、いつの間にか既にシナレフィーさんに乗っていた。
リリが、シナレフィーさんの爪、手の甲、腕、そして胴体と、慣れた足取りで登っていく。
「よいしょっ……と」
それを真似て、何とか私も竜の背によじ登った。
前からミアさん、私、リリの順で座る。
うう、既に高い。地上が遠い。これは見ては駄目だ、頭がグラグラしてくる。
多分、結界魔法か何かで上空の気温や風圧をカバーしてくれるのだろうけど、目が眩んでずり落ちた場合ってどうなんだろう。
……か、考えないでおこう。
バサッ
竜が巨大な翼を広げる。
『では行きますよ』
そして彼の言葉とともに、竜の巨体は身を固くした私に容赦なく、高速で飛び立った。
モグモグしている食人蔦の口に釘付けになっていた私の頭に、食人蔦たちとは違うテレパシーが届く。シナレフィーさんが発したもののようだった。
シナレフィーさんに目を向ける。
『一部の人間が使役する、失せ物探し用に飼育された魔物です。情報が伝達されたなら色が赤く変わるので、妨害は間に合ったようですね。妃殿下を探しているのなら、依頼主は恐らく勇者でしょう』
「カシムが?」
『妃殿下の契約は陛下が強制的に外しましたが、向こうは縛られたままです。勇者は、貴女を殺して次の嫁を用意しようと考えるはずです』
「結局、命は狙われるわけですね……」
カシムが『勇者の嫁』に拘るのは、やはり森にあった剣を抜くためだろう。
ギルはあの剣のことを『竜殺しの剣』と呼んでいた。ギルもシナレフィーさんも、その竜だ。これほど不穏な名称もない。
(そもそも何で森に放置してあるんだろう?)
あれでは勇者に持って行って下さいと言わんばかりだ。こちらで回収出来ないものなんだろうか。――うん。今度、ギルに相談してみよう。
「食人蔦さんたち、守ってくれてありがとう!」
『あいよー』
ワシャワシャ
『リリ。大きめの帽子を妃殿下に渡して下さい』
「はいですっ」
シナレフィーさんの指示に、リリが亜空間から帽子を取り出す。
おお。これが大きさも重量も無視してアイテムを持ち歩ける、カラクリなわけですな。
ポーションを九十九個なら鞄に入らないこともないかもだけど、RPGは大量の武具に、場合によっては丸太なんかも持ち歩いちゃうからね。ここでの『鞄』は、亜空間に繋がっている入口を意味するに違いない。
「どうぞ、サラ様」
ぽすっ
リリが私に帽子を被せてくれる。
『勇者が探しているなら、妃殿下の髪の色は目立ちます。それで隠していて下さい』
「わかりました」
リリからヘアピンも受け取り、帽子を固定する。
「それじゃあ、サラさん。行きましょうか」
準備万端となったところで、頭上から声が掛かった。ミアさんは、いつの間にか既にシナレフィーさんに乗っていた。
リリが、シナレフィーさんの爪、手の甲、腕、そして胴体と、慣れた足取りで登っていく。
「よいしょっ……と」
それを真似て、何とか私も竜の背によじ登った。
前からミアさん、私、リリの順で座る。
うう、既に高い。地上が遠い。これは見ては駄目だ、頭がグラグラしてくる。
多分、結界魔法か何かで上空の気温や風圧をカバーしてくれるのだろうけど、目が眩んでずり落ちた場合ってどうなんだろう。
……か、考えないでおこう。
バサッ
竜が巨大な翼を広げる。
『では行きますよ』
そして彼の言葉とともに、竜の巨体は身を固くした私に容赦なく、高速で飛び立った。