トリップしたら魔王の花嫁⁉ ~勇者の生贄にされそうだったので敵の敵は味方と思い魔王に助けを求めたら本当に来ました~
(あ、ギルにお土産を買って行こうかな)
物作りの参考にというのは、あくまでシナレフィーさんの用途。私たちには、自由に買えばいいと言っていた。
辺りの棚を、適当に眺めてみる。
商品名も値札も見たことがない文字ではあるが、注視すれば例のアイテム説明欄が表示されることに気付いた。便利!
(何が良いかな)
ギルも亜空間に荷物を仕舞えそうだから、収納グッズ系は要らなそうだ。同じ理由で、筆記用具や紙類も在庫は持っていそうだし……。
ギルが持っていなさそうな物。かつ、ギルが喜びそうな物――
――あ。今、ピンと来た。
私は目の前の棚に並べられていた、紙製のコースターを手に取った。
正方形で、程よく硬度がある紙質だ。
(うん。これなら思った通り、折り紙になりそう)
ギルは以前、謎を探すのが好きだと言っていた。折った状態で渡したなら、興味を持ってくれるかもしれない。
単色、柄入り。何パターンか買って行こう。
懐を探って、銀貨が入った小袋を取り出す。馬車に乗る前に、リリから小遣いとして十数枚もらっていた。
最初、ギルからだと渡されたそれは、ズッシリとした金貨入りの袋だった。
袋を開けた瞬間、目が眩むピカピカに急いで袋の口を閉じた。そして、「金貨を使うのは目立つ」という理由を付けて、リリに突き返した。
とはいえ、折角街を歩くのに文無しは寂しい。なので私は、リリが自分のために用意したお小遣いと同額だけ、もらうことにした。
「これ、買ってきますね」
シナレフィーさんに一声かけて、会計に向かう。
会計で銀貨を渡したところ、じゃらっと銅貨のお釣りが。銀貨一枚でも結構な価値なんだろう。金貨を持ち歩かなくて正解だ。
私の次にシナレフィーさんが、小物数点を手に会計にやって来た。持ってきたのはそれだけでも、店主に商品名を伝えているあたり、それも買うのだろう。
……えっと、延々言っていますが、それ全部買うつもりですか? 買うつもりなんでしょうね。ええ。
精算を終えた品から、シナレフィーさんがそれを例の亜空間にポイポイ投げ入れて行く。
他人の所有印が付いている物は入れられないため、勝手に放り込んで盗む真似はできないそうだ。が、説明をしていたシナレフィーさんが『基本的には』と言っていたあたり、抜け道はあるのだろう。そして彼はそれができるのだろう。平和的にお買い物していただき、ありがとうございます。
平和的といえば、今回の軍資金。出所が気になって聞いてみたところ、真っ当な入手経路だった。ほっ。
「少し前に拾った物を売っただけ」。私の『ちょっと前』が一年くらい前の話になってきた感覚のノリで、シナレフィーさんの『少し前』は数十年と思われる。それだと、例えば単に道端でむしった草であっても、現在それが希少種であれば金に換わるだろう。
シダの葉の化石に大喜びするのが、人類ですから。寿命が百年に満たない人間にとって、『時間』は高価なのだ。
雑貨屋を後にして、今度は生鮮食品の売り場へ。
ここでは、リリが買い物リストを延々と読み上げる番だった。
その後は例によって、亜空間へポイポイ。穀物、野菜、果物、肉に魚。次から次へと、それらは消え行った。
その間、シナレフィーさんとミアさんは、大きな水槽の前に並んで立っていた。シナレフィーさんは水槽の構造、ミアさんは水槽の魚について話しており、噛み合っていないはずなのに会話は成立していた。謎すぎる。
お次は宝石店へ。魔法陣を描く染料にするらしい。宝石を砕いて粉にするとか、聞くだけで胃がキリキリする。
そんな私に非情にも、シナレフィーさんは代理購入を頼んできた。どうやら過去に、目利きが完璧過ぎて出禁を食らったらしい。
私も私でアイテム説明欄というチート能力持ち。店主が可哀想と思いつつも、心を鬼にして一番魔力補正値が高い物をゲットしてきた。申し訳ない!
物作りの参考にというのは、あくまでシナレフィーさんの用途。私たちには、自由に買えばいいと言っていた。
辺りの棚を、適当に眺めてみる。
商品名も値札も見たことがない文字ではあるが、注視すれば例のアイテム説明欄が表示されることに気付いた。便利!
(何が良いかな)
ギルも亜空間に荷物を仕舞えそうだから、収納グッズ系は要らなそうだ。同じ理由で、筆記用具や紙類も在庫は持っていそうだし……。
ギルが持っていなさそうな物。かつ、ギルが喜びそうな物――
――あ。今、ピンと来た。
私は目の前の棚に並べられていた、紙製のコースターを手に取った。
正方形で、程よく硬度がある紙質だ。
(うん。これなら思った通り、折り紙になりそう)
ギルは以前、謎を探すのが好きだと言っていた。折った状態で渡したなら、興味を持ってくれるかもしれない。
単色、柄入り。何パターンか買って行こう。
懐を探って、銀貨が入った小袋を取り出す。馬車に乗る前に、リリから小遣いとして十数枚もらっていた。
最初、ギルからだと渡されたそれは、ズッシリとした金貨入りの袋だった。
袋を開けた瞬間、目が眩むピカピカに急いで袋の口を閉じた。そして、「金貨を使うのは目立つ」という理由を付けて、リリに突き返した。
とはいえ、折角街を歩くのに文無しは寂しい。なので私は、リリが自分のために用意したお小遣いと同額だけ、もらうことにした。
「これ、買ってきますね」
シナレフィーさんに一声かけて、会計に向かう。
会計で銀貨を渡したところ、じゃらっと銅貨のお釣りが。銀貨一枚でも結構な価値なんだろう。金貨を持ち歩かなくて正解だ。
私の次にシナレフィーさんが、小物数点を手に会計にやって来た。持ってきたのはそれだけでも、店主に商品名を伝えているあたり、それも買うのだろう。
……えっと、延々言っていますが、それ全部買うつもりですか? 買うつもりなんでしょうね。ええ。
精算を終えた品から、シナレフィーさんがそれを例の亜空間にポイポイ投げ入れて行く。
他人の所有印が付いている物は入れられないため、勝手に放り込んで盗む真似はできないそうだ。が、説明をしていたシナレフィーさんが『基本的には』と言っていたあたり、抜け道はあるのだろう。そして彼はそれができるのだろう。平和的にお買い物していただき、ありがとうございます。
平和的といえば、今回の軍資金。出所が気になって聞いてみたところ、真っ当な入手経路だった。ほっ。
「少し前に拾った物を売っただけ」。私の『ちょっと前』が一年くらい前の話になってきた感覚のノリで、シナレフィーさんの『少し前』は数十年と思われる。それだと、例えば単に道端でむしった草であっても、現在それが希少種であれば金に換わるだろう。
シダの葉の化石に大喜びするのが、人類ですから。寿命が百年に満たない人間にとって、『時間』は高価なのだ。
雑貨屋を後にして、今度は生鮮食品の売り場へ。
ここでは、リリが買い物リストを延々と読み上げる番だった。
その後は例によって、亜空間へポイポイ。穀物、野菜、果物、肉に魚。次から次へと、それらは消え行った。
その間、シナレフィーさんとミアさんは、大きな水槽の前に並んで立っていた。シナレフィーさんは水槽の構造、ミアさんは水槽の魚について話しており、噛み合っていないはずなのに会話は成立していた。謎すぎる。
お次は宝石店へ。魔法陣を描く染料にするらしい。宝石を砕いて粉にするとか、聞くだけで胃がキリキリする。
そんな私に非情にも、シナレフィーさんは代理購入を頼んできた。どうやら過去に、目利きが完璧過ぎて出禁を食らったらしい。
私も私でアイテム説明欄というチート能力持ち。店主が可哀想と思いつつも、心を鬼にして一番魔力補正値が高い物をゲットしてきた。申し訳ない!