トリップしたら魔王の花嫁⁉ ~勇者の生贄にされそうだったので敵の敵は味方と思い魔王に助けを求めたら本当に来ました~
(前は、このことは墓場まで持って行く秘密にしようと思ってたけど……)
ジクジクとするこの胸の痛みは、きっと無視してはいけない。
「……私の世界には、自分が勇者になって魔物を倒すゲームがあったんです」
速くなる鼓動を感じながら、口にする。
「私もそれをやってました……それも、数多く」
私はギルの反応に注意を払って、
「ああ」
だから彼がポンッと手を打った音に、ついビクリと身体を震わせてしまった。
「それでサラは触媒と聞いてすぐピンと来たし、冒険者ギルドの存在もパッと出て来たのか」
しかしギルの口調は、随分と軽いノリで。しかも純粋に感心した的な言い方で……あれ? 思ってた反応と違う。
「えっと……ギルは、私がそういうゲームをしていても、何とも思わない……の?」
恐る恐る、聞いてみる。藪蛇かもしれないが、気になってしまう。
けれどギルは「ん?」と、わかっていないような返事をして。そして彼は少し間が空いてから、「あっ」と声を上げた。
「何だ、そんなことを気にしていたのか。別にゲームでそうしていたからって、咎めやしないさ。こっちでも盤上の駒を取る奴があるが、あれは人間同士の殺し合いを模して作られているらしい。だからといって、そのゲームが好きな奴が殺人狂ってわけじゃない」
ギルの片手が、私の頭をポンポンと撫でる。
私は横向きに座り直して、彼を見上げた。
言葉通りの、まったく気にした素振りのないギルの顔がそこにあった。
(またギルは、そんなあっけらかんと言って、私を救うんだ)
カルガディウムで、私を好きだと言ってくれたときのことを思い出す。
そう言ってもらって、心から嬉しかったこと。
それから、
「好き」
ギルにそう、伝えたいと思ったこと。
「え?」
「ギルが、好きです」
ギルの肩に手を掛け、私は背を伸ばして彼にキスをした。
「⁉」
ギルが目を丸くて、
驚いたせいか仰け反って、
そして――
ガタターンッ
「きゃっ」
彼は椅子から転げ落ちた。
「痛た……自分の重力操作し忘れた」
「だ、大丈夫ですか?」
私の下敷きになったギルが、寝そべったまま自分の肩を摩る。派手な音がした割りに、私には僅かの衝撃も無かった。彼が重力操作してくれたおかげらしい。
「サラからされると思わなくて、びっくりした」
「!」
さっきは丸くしていた、深い青の瞳が細められる。
見慣れない、彼の笑顔を見下ろすという状況に、私は自分の今の状態に気付いた。
(お、押し倒してる、私!)
慌てて退こうとして、けれどそれを腰に回されたままだったギルの手に妨害される。
「あの、ギル……あ」
もう片方の彼の手が私の頭の後ろに回って、それは私を真下にある彼の顔に引き寄せた。
ふっと、触れるだけのキスをする。
「さっきの、もう一回言って。サラ」
近過ぎて、表情が見えないギルが囁く。
「ギルが、好き」
けれど、私もギルも、お互いどんな顔をしているのか、知っているような気がした。
「ありがとう。俺も、サラが好きだ……」
ジクジクとするこの胸の痛みは、きっと無視してはいけない。
「……私の世界には、自分が勇者になって魔物を倒すゲームがあったんです」
速くなる鼓動を感じながら、口にする。
「私もそれをやってました……それも、数多く」
私はギルの反応に注意を払って、
「ああ」
だから彼がポンッと手を打った音に、ついビクリと身体を震わせてしまった。
「それでサラは触媒と聞いてすぐピンと来たし、冒険者ギルドの存在もパッと出て来たのか」
しかしギルの口調は、随分と軽いノリで。しかも純粋に感心した的な言い方で……あれ? 思ってた反応と違う。
「えっと……ギルは、私がそういうゲームをしていても、何とも思わない……の?」
恐る恐る、聞いてみる。藪蛇かもしれないが、気になってしまう。
けれどギルは「ん?」と、わかっていないような返事をして。そして彼は少し間が空いてから、「あっ」と声を上げた。
「何だ、そんなことを気にしていたのか。別にゲームでそうしていたからって、咎めやしないさ。こっちでも盤上の駒を取る奴があるが、あれは人間同士の殺し合いを模して作られているらしい。だからといって、そのゲームが好きな奴が殺人狂ってわけじゃない」
ギルの片手が、私の頭をポンポンと撫でる。
私は横向きに座り直して、彼を見上げた。
言葉通りの、まったく気にした素振りのないギルの顔がそこにあった。
(またギルは、そんなあっけらかんと言って、私を救うんだ)
カルガディウムで、私を好きだと言ってくれたときのことを思い出す。
そう言ってもらって、心から嬉しかったこと。
それから、
「好き」
ギルにそう、伝えたいと思ったこと。
「え?」
「ギルが、好きです」
ギルの肩に手を掛け、私は背を伸ばして彼にキスをした。
「⁉」
ギルが目を丸くて、
驚いたせいか仰け反って、
そして――
ガタターンッ
「きゃっ」
彼は椅子から転げ落ちた。
「痛た……自分の重力操作し忘れた」
「だ、大丈夫ですか?」
私の下敷きになったギルが、寝そべったまま自分の肩を摩る。派手な音がした割りに、私には僅かの衝撃も無かった。彼が重力操作してくれたおかげらしい。
「サラからされると思わなくて、びっくりした」
「!」
さっきは丸くしていた、深い青の瞳が細められる。
見慣れない、彼の笑顔を見下ろすという状況に、私は自分の今の状態に気付いた。
(お、押し倒してる、私!)
慌てて退こうとして、けれどそれを腰に回されたままだったギルの手に妨害される。
「あの、ギル……あ」
もう片方の彼の手が私の頭の後ろに回って、それは私を真下にある彼の顔に引き寄せた。
ふっと、触れるだけのキスをする。
「さっきの、もう一回言って。サラ」
近過ぎて、表情が見えないギルが囁く。
「ギルが、好き」
けれど、私もギルも、お互いどんな顔をしているのか、知っているような気がした。
「ありがとう。俺も、サラが好きだ……」