トリップしたら魔王の花嫁⁉ ~勇者の生贄にされそうだったので敵の敵は味方と思い魔王に助けを求めたら本当に来ました~
集落の景色から一転して、花畑が広がる高台に出る。
「え……着いた? もう着いた⁉」
私がその変化に驚く前に、先にギルが驚きの声を上げた。
次いで彼がキョロキョロと辺りを見回し始めて、その様子がまた可愛い。そう思いながらジッと見ていたら、「しまった」という表情のギルと目が合った。
その反応を見るに、どうやらギルは私が驚くことを期待していたらしい。なのに自分の方が驚かされて、きまりが悪いと。
笑ってはいけない。いけないので、代わりに繋いだ手をにぎにぎした。
今度はギルが私の手を引いて、花畑の中心まで歩いて行く。
そこには大きな倒木があり、その上にはリスがいた。
(エゾリスだ。わー、ふっかふかの尻尾)
光の精霊は兎だった。ということは、やっぱりこの子が土の精霊……?
「魔王か。久々に来たと思ったら、一発で正解とか。つまんねー奴だな」
喋った。これは正解でしょう。
「そう言うなって。俺の嫁がお前の祠を早く直してやりたくて、きっとそれが通じたんだって」
「えっ、そ、そうなのか。お嬢ちゃん、良い奴だな」
「そ、それほどでも」
本気で感動している様子の土の精霊に、取り敢えず笑って返しておく。
光の精霊に続き、土の精霊もチョロい気がするけど、神様的存在がこれで大丈夫だろうかこの世界。いや、それを言うならギリシャ神話の最高神とかの方が大丈夫じゃないか。
結論、神様がチョロくても問題無い。
「元は、この倒れている木が祠だったか」
ギルが、その場でしゃがみ込む。
「カシムは木は切れないと見て、土を掘り返したのか」
「水の精霊の力が届かなくなっちまって、根が弱ってたんだ。そこをやられた」
「この木を元通りにするのは無理だな。根以外も枯れてる」
「わかってる。この木には拘らねぇよ。木の温もりを感じられる祠なら、何でもいい」
「そうだなー……」
ギルが口元に手を当て、考える仕草をする。
それから彼は、目の前の倒木の枝をバキッと一本折った。
次に、どこかから手元に木桶を引き寄せて、ギルがその中に枝を入れる。と同時に枝は、砕けてウッドチップに変わった。
「よし、これでどうだ」
そしてギルは、その木桶を倒木の側の地面に置いた。
――待って。それが祠なの? 幾ら「何でもいい」とは言っていても、さすがにそれは……。
「こ、これは……落ち着く……!」
いいんだ、それで。木桶で、いいんだ。
思った以上の満足顔で、土の精霊は木桶の中で大の字に寝転がった。
「後は、腹が膨れれば気分も上がる。ほら」
ギルが亜空間から素焼きのナッツを取り出し、木桶の中にザラッと入れる。
それに気を良くした様子の土の精霊は、大きな尻尾をブンブンと振った。
「お嬢ちゃんも魔王も良い奴だな!」
(きっと、そんなあなたが一番『良い奴』です)
起き上がってホクホク顔でナッツを食べ始めた土の精霊に、私は心の中だけで返事しておいた。
「サラ。俺たちもここで食事にするか」
「景色も良いし」と口にしながら、ギルが倒木に腰掛ける。元祠なのに良いんだろうか、彼は私にも隣に座るよう勧めた。
土の精霊を見てみる。うん、まったく気にしてない。私は食事を並べる隙間を空けて、ギルの隣に座った。
ギルが私との間に布を広げ、その上にパンとそれに挟む具材を並べる。
花畑の中でリスが木の実を食べるという癒やし空間の中、私とギルは少し遅い昼食にした。
「え……着いた? もう着いた⁉」
私がその変化に驚く前に、先にギルが驚きの声を上げた。
次いで彼がキョロキョロと辺りを見回し始めて、その様子がまた可愛い。そう思いながらジッと見ていたら、「しまった」という表情のギルと目が合った。
その反応を見るに、どうやらギルは私が驚くことを期待していたらしい。なのに自分の方が驚かされて、きまりが悪いと。
笑ってはいけない。いけないので、代わりに繋いだ手をにぎにぎした。
今度はギルが私の手を引いて、花畑の中心まで歩いて行く。
そこには大きな倒木があり、その上にはリスがいた。
(エゾリスだ。わー、ふっかふかの尻尾)
光の精霊は兎だった。ということは、やっぱりこの子が土の精霊……?
「魔王か。久々に来たと思ったら、一発で正解とか。つまんねー奴だな」
喋った。これは正解でしょう。
「そう言うなって。俺の嫁がお前の祠を早く直してやりたくて、きっとそれが通じたんだって」
「えっ、そ、そうなのか。お嬢ちゃん、良い奴だな」
「そ、それほどでも」
本気で感動している様子の土の精霊に、取り敢えず笑って返しておく。
光の精霊に続き、土の精霊もチョロい気がするけど、神様的存在がこれで大丈夫だろうかこの世界。いや、それを言うならギリシャ神話の最高神とかの方が大丈夫じゃないか。
結論、神様がチョロくても問題無い。
「元は、この倒れている木が祠だったか」
ギルが、その場でしゃがみ込む。
「カシムは木は切れないと見て、土を掘り返したのか」
「水の精霊の力が届かなくなっちまって、根が弱ってたんだ。そこをやられた」
「この木を元通りにするのは無理だな。根以外も枯れてる」
「わかってる。この木には拘らねぇよ。木の温もりを感じられる祠なら、何でもいい」
「そうだなー……」
ギルが口元に手を当て、考える仕草をする。
それから彼は、目の前の倒木の枝をバキッと一本折った。
次に、どこかから手元に木桶を引き寄せて、ギルがその中に枝を入れる。と同時に枝は、砕けてウッドチップに変わった。
「よし、これでどうだ」
そしてギルは、その木桶を倒木の側の地面に置いた。
――待って。それが祠なの? 幾ら「何でもいい」とは言っていても、さすがにそれは……。
「こ、これは……落ち着く……!」
いいんだ、それで。木桶で、いいんだ。
思った以上の満足顔で、土の精霊は木桶の中で大の字に寝転がった。
「後は、腹が膨れれば気分も上がる。ほら」
ギルが亜空間から素焼きのナッツを取り出し、木桶の中にザラッと入れる。
それに気を良くした様子の土の精霊は、大きな尻尾をブンブンと振った。
「お嬢ちゃんも魔王も良い奴だな!」
(きっと、そんなあなたが一番『良い奴』です)
起き上がってホクホク顔でナッツを食べ始めた土の精霊に、私は心の中だけで返事しておいた。
「サラ。俺たちもここで食事にするか」
「景色も良いし」と口にしながら、ギルが倒木に腰掛ける。元祠なのに良いんだろうか、彼は私にも隣に座るよう勧めた。
土の精霊を見てみる。うん、まったく気にしてない。私は食事を並べる隙間を空けて、ギルの隣に座った。
ギルが私との間に布を広げ、その上にパンとそれに挟む具材を並べる。
花畑の中でリスが木の実を食べるという癒やし空間の中、私とギルは少し遅い昼食にした。