トリップしたら魔王の花嫁⁉ ~勇者の生贄にされそうだったので敵の敵は味方と思い魔王に助けを求めたら本当に来ました~
「復活した直後は瀕死らしいですし、そうなると暫くは大人しくしているんじゃないでしょうか」
あ、やっぱり。聞き間違いじゃなかった……。
「えっと……つまり一度死んだけど今は生きている、と」
「ええ。本人が死を望まない限りは、勝手に何度も生き返るとか。『死を望まない限り』なんて、そんなもの死にかければ自然と生存本能が働くでしょうに。最悪な体質ですよね、さすがに同情します」
全然、「同情します」な表情でないシナレフィーさんが、サラッと答えてくれる。
『勇者は教会で復活』。定番中の定番とはいえ、それ本当に再現されているんだ。で、そんなふうに常識のように思われているんだ。うわぁ……。
「ここに妃殿下を降ろした後、精霊の村に戻ったのなら、まあ堪えた方ではないですか? 私が同じようなことをミアにされたなら、復活先の教会で待ち構えて百回以上は殺し続けますよ」
「え……」
何そのホラー。怖すぎる。
そう思ってたのが顔に出ていたのか、シナレフィーさんに「竜族は大体、そんなものです」と、これもまた常識のように言われた。ああ、うん。『竜は番に執心』も結構定番ネタではありますけれども。
「何にせよ、陛下が人間を殺したのは事実です」
「……っ」
今度は軽さなど一つも無い声が来て、私の頭はスッと冷えた。
ギルはカシムを殺した。それは事実。
(そのことをギルは気にしてる)
シナレフィーさんは、ギルが人間に手を下すのは珍しいと言っていた。ギルも戸惑っていたし、咄嗟的に取った行動のように思える。
人間を殺したことというより、私の同族を殺したことに彼は動揺しているのだと思う。ゲームでは何の感情もなく魔物を討伐していた私が、ギルを前に気まずい思いをした時のように。
「強制送還した」という表現は、嘘ではないが誤魔化しの類いにあたる。私に対し誤魔化したこともまた、きっとギルは気に病んでいる。
(でもそれは全部、私のためだ)
ギルがカシムを攻撃したのは、私の格好を見てのことだった。
私のために怒って、私のために隠した。
私が謝ったなら、そのことすら彼は自分の責にしてしまうかもしれない。
(それは駄目)
不安に震えていたギルを思い出す。
「……ギルと、一度しっかり話をしたいです」
私に安心をくれた彼に、私も安心をあげたい。
「そうですか、わかりました。明日の昼過ぎキスの時間に戻るでしょうから、捕縛の準備をしておきます」
「捕縛……」
捕縛とは。
そしてその床に描き始めた魔法陣は、何のためのものですか。
「えっと、よろしくお願いします……?」
私は一抹の不安を抱きつつも、しゃがみ込んだシナレフィーさんの背中に声を掛けた。
あ、やっぱり。聞き間違いじゃなかった……。
「えっと……つまり一度死んだけど今は生きている、と」
「ええ。本人が死を望まない限りは、勝手に何度も生き返るとか。『死を望まない限り』なんて、そんなもの死にかければ自然と生存本能が働くでしょうに。最悪な体質ですよね、さすがに同情します」
全然、「同情します」な表情でないシナレフィーさんが、サラッと答えてくれる。
『勇者は教会で復活』。定番中の定番とはいえ、それ本当に再現されているんだ。で、そんなふうに常識のように思われているんだ。うわぁ……。
「ここに妃殿下を降ろした後、精霊の村に戻ったのなら、まあ堪えた方ではないですか? 私が同じようなことをミアにされたなら、復活先の教会で待ち構えて百回以上は殺し続けますよ」
「え……」
何そのホラー。怖すぎる。
そう思ってたのが顔に出ていたのか、シナレフィーさんに「竜族は大体、そんなものです」と、これもまた常識のように言われた。ああ、うん。『竜は番に執心』も結構定番ネタではありますけれども。
「何にせよ、陛下が人間を殺したのは事実です」
「……っ」
今度は軽さなど一つも無い声が来て、私の頭はスッと冷えた。
ギルはカシムを殺した。それは事実。
(そのことをギルは気にしてる)
シナレフィーさんは、ギルが人間に手を下すのは珍しいと言っていた。ギルも戸惑っていたし、咄嗟的に取った行動のように思える。
人間を殺したことというより、私の同族を殺したことに彼は動揺しているのだと思う。ゲームでは何の感情もなく魔物を討伐していた私が、ギルを前に気まずい思いをした時のように。
「強制送還した」という表現は、嘘ではないが誤魔化しの類いにあたる。私に対し誤魔化したこともまた、きっとギルは気に病んでいる。
(でもそれは全部、私のためだ)
ギルがカシムを攻撃したのは、私の格好を見てのことだった。
私のために怒って、私のために隠した。
私が謝ったなら、そのことすら彼は自分の責にしてしまうかもしれない。
(それは駄目)
不安に震えていたギルを思い出す。
「……ギルと、一度しっかり話をしたいです」
私に安心をくれた彼に、私も安心をあげたい。
「そうですか、わかりました。明日の昼過ぎキスの時間に戻るでしょうから、捕縛の準備をしておきます」
「捕縛……」
捕縛とは。
そしてその床に描き始めた魔法陣は、何のためのものですか。
「えっと、よろしくお願いします……?」
私は一抹の不安を抱きつつも、しゃがみ込んだシナレフィーさんの背中に声を掛けた。