トリップしたら魔王の花嫁⁉ ~勇者の生贄にされそうだったので敵の敵は味方と思い魔王に助けを求めたら本当に来ました~
「ギルは眠気はどうですか?」
「竜生でも稀な冴え渡り具合だ」
「昼寝はできそうにないですね。――ギル、顔を見て話しませんか?」
ギルが眠らないのなら、話をしていたい。ここのところ、そういった時間を取れていなかったし。
いつもの感じですぐに了承が来るものと思い、私は身じろぎした。が、予想に反してギルが放してくれない。
「あ……その、諸事情により少し待って欲しいというか――そうだ、例の魔法」
「例の魔法?」
突然の話題転換に、首を傾げる。
ギルが絡めていた足を解き、次に私を抱き込んだ腕を少し緩める。そうしてから彼は、神妙な声色で「いいか、サラ」と言った。
「俺が腕を離したと同時に、『ハナキ』と言ってくれ。で、その後、急いでベッドから出てくれ」
「?」
何故、いきなりそこで私の名字が。
「――『ハナキ』」
大量の疑問符を頭上に浮かべながらも、ギルに指示されたタイミングで口にする。
すると、
「! う、お……本気で、動け、ない……っ」
ピシッとでも聞こえてきそうなほど、ギルの身体が不自然に固まった。
「ええ?」
さらに疑問符を増やしながら、ベッドから降りる。
見下ろす形になったギルは、まだ固まっていた。中途半端に片腕を宙に浮かせた、妙な格好で。
「これ、は……十秒間、俺を、静止させる、魔法……だ」
「えええ?」
冗談みたいな台詞を、とても冗談に見えない息を荒くしたギルに言われる。『静止』には話すことも含まれているのか、無理に話しているように見える。
ギルが口を閉ざすと、すぐに彼の呼吸は整った。推測通り『静止』の範囲は、行動に限らず言動にまで及ぶようだ。
「うおっ」
宙に浮いていたギルの腕が、ボトッとシーツの上に落ちる。十秒経ったので魔法が解けたらしい。
ギルが「よし、発動の確認が取れた」と言って、一息つく。何とも身体を張った確認方法だ。まあ効果を考えると、それしか確かめる術は無いわけだけれども。
「悪用されたらどうするんですか?」
主にシナレフィーさん辺りに。と思ったのが表情に出たのか、ギルはプッと吹き出した。それから身を起こした彼が、ベッドの端に腰掛ける。ギルに手招きされ、私はその隣へ座った。
「大丈夫だ。サラの声で言われない限り効力は現れない」
「それなら少しは安心しました。ギルの創作魔法のはずが、使いこなしていたシナレフィーさんを見た直後だったので」
「本当、それな……」
ギルが遠い目をする。言い方からして、やっぱりあの『私』が現れた魔法は教えたわけではなかったようで。
「竜生でも稀な冴え渡り具合だ」
「昼寝はできそうにないですね。――ギル、顔を見て話しませんか?」
ギルが眠らないのなら、話をしていたい。ここのところ、そういった時間を取れていなかったし。
いつもの感じですぐに了承が来るものと思い、私は身じろぎした。が、予想に反してギルが放してくれない。
「あ……その、諸事情により少し待って欲しいというか――そうだ、例の魔法」
「例の魔法?」
突然の話題転換に、首を傾げる。
ギルが絡めていた足を解き、次に私を抱き込んだ腕を少し緩める。そうしてから彼は、神妙な声色で「いいか、サラ」と言った。
「俺が腕を離したと同時に、『ハナキ』と言ってくれ。で、その後、急いでベッドから出てくれ」
「?」
何故、いきなりそこで私の名字が。
「――『ハナキ』」
大量の疑問符を頭上に浮かべながらも、ギルに指示されたタイミングで口にする。
すると、
「! う、お……本気で、動け、ない……っ」
ピシッとでも聞こえてきそうなほど、ギルの身体が不自然に固まった。
「ええ?」
さらに疑問符を増やしながら、ベッドから降りる。
見下ろす形になったギルは、まだ固まっていた。中途半端に片腕を宙に浮かせた、妙な格好で。
「これ、は……十秒間、俺を、静止させる、魔法……だ」
「えええ?」
冗談みたいな台詞を、とても冗談に見えない息を荒くしたギルに言われる。『静止』には話すことも含まれているのか、無理に話しているように見える。
ギルが口を閉ざすと、すぐに彼の呼吸は整った。推測通り『静止』の範囲は、行動に限らず言動にまで及ぶようだ。
「うおっ」
宙に浮いていたギルの腕が、ボトッとシーツの上に落ちる。十秒経ったので魔法が解けたらしい。
ギルが「よし、発動の確認が取れた」と言って、一息つく。何とも身体を張った確認方法だ。まあ効果を考えると、それしか確かめる術は無いわけだけれども。
「悪用されたらどうするんですか?」
主にシナレフィーさん辺りに。と思ったのが表情に出たのか、ギルはプッと吹き出した。それから身を起こした彼が、ベッドの端に腰掛ける。ギルに手招きされ、私はその隣へ座った。
「大丈夫だ。サラの声で言われない限り効力は現れない」
「それなら少しは安心しました。ギルの創作魔法のはずが、使いこなしていたシナレフィーさんを見た直後だったので」
「本当、それな……」
ギルが遠い目をする。言い方からして、やっぱりあの『私』が現れた魔法は教えたわけではなかったようで。