トリップしたら魔王の花嫁⁉ ~勇者の生贄にされそうだったので敵の敵は味方と思い魔王に助けを求めたら本当に来ました~
「ギルが奈落はどうかと思った理由は何ですか? 共通点があれば、候補地になるかも」
私は、もう少し食い下がってみることにした。そんな私にギルが「なるほど」と言いながら、ベッドに置いてない方の手で顎を撫でる。
「理由は……単に消去法かな。精霊全般の特徴において、ある程度魔力が満ちているところにしか行けない。村から飛び出た火の精霊が火山に向かったように、村の外では行き先は限られる。その場合に闇が行きそうなのが、奈落かなと」
「魔力が満ちていて、闇属性な場所……」
ギルを真似たわけではないけれど、私も片手を顎にやって頭を捻る。
しかし考えれば考えるほど、避けたくて食い下がった『奈落』が手堅い候補に思えてきてしまい、私は唸った。
ゲームで精霊に会いに行こうと思ったら、深い森の中だったり険しい山頂だったりするのが大半だ。闇の精霊の場合は、洞窟や地底のパターンが多かったように思う。
「オプストフルクトに、光が差し込まない洞窟は在りますか?」
「在るには在るけど、闇のは狭い場所が好きなんだ。それを踏まえると該当する洞窟は無いかな」
洞窟も駄目、か。
「奈落まで行かなくても、もっと浅い層とかは?」
「温かい場所も好きだから、ある程度地熱を感じられる深さにいると思う」
「そうですか……」
他に……他に闇っぽい場所は……。
「あっ、風と水の精霊のように、実は魔王城にいるとかは?」
ハッと閃いて、ギルを見る。
魔王はまさに、魔力と闇の体現者。その魔王が住まう城なんて、条件ズバリそのものではなかろうか。灯台もと暗しともいうし。
風と水の精霊は、よく来ると前にミアさんが言っていた。他の精霊が二体も来る場所だ、精霊が好む場所という点で申し分ない。
「それだ」と私は手を叩き――かけて、その手でそのまま頭を抱えた。
「――って、ああ……魔王城にいるなら、魔王城がそれを教えてくれますよね……」
忘れていた。魔王城は話せる建物だった。
上がった気持ちの分、ショックも大きい。俯いた私を、ギルは頭を抱えた私の手ごと、労るように撫でてくれた。
ギルが私をなでなでしながら、「ああ、でも」と何かを思い出したように零す。
「こっそり忍び込まれて、じっとされていたらわからないこともある。実際、水のはミアが目視で確認した方が早かった」
「⁉」
ということは、可能性が無きにしも非ず?
「ただ、闇の精霊は気紛れで好奇心旺盛。あいつの性格からいって、一所に留まっていることはあまり考えられないな。ウロチョロしてたなら、サラが言ったように魔王城が気付くと思う」
可能性が無きにしも非ずでも、限りなく低い……か。
「姿もそうだが、本当、猫っぽい奴だよ」
「ん? 猫?」
ギルの一言が何か引っ掛かり、私は記憶を掘り起こすように目を閉じて考えた。
暗くて狭い場所が好き。
温かい場所が好き。
気紛れで好奇心旺盛。そして、姿は猫……⁉
「ギル」
目を開けて、私はギルの膝をトントンと指で叩いた。
「ギル。私の部屋まで来てもらっていいですか?」
ギルがキョトンとした顔をして、けれどすぐに彼は「わかった」と立ち上がってくれた。
私は、もう少し食い下がってみることにした。そんな私にギルが「なるほど」と言いながら、ベッドに置いてない方の手で顎を撫でる。
「理由は……単に消去法かな。精霊全般の特徴において、ある程度魔力が満ちているところにしか行けない。村から飛び出た火の精霊が火山に向かったように、村の外では行き先は限られる。その場合に闇が行きそうなのが、奈落かなと」
「魔力が満ちていて、闇属性な場所……」
ギルを真似たわけではないけれど、私も片手を顎にやって頭を捻る。
しかし考えれば考えるほど、避けたくて食い下がった『奈落』が手堅い候補に思えてきてしまい、私は唸った。
ゲームで精霊に会いに行こうと思ったら、深い森の中だったり険しい山頂だったりするのが大半だ。闇の精霊の場合は、洞窟や地底のパターンが多かったように思う。
「オプストフルクトに、光が差し込まない洞窟は在りますか?」
「在るには在るけど、闇のは狭い場所が好きなんだ。それを踏まえると該当する洞窟は無いかな」
洞窟も駄目、か。
「奈落まで行かなくても、もっと浅い層とかは?」
「温かい場所も好きだから、ある程度地熱を感じられる深さにいると思う」
「そうですか……」
他に……他に闇っぽい場所は……。
「あっ、風と水の精霊のように、実は魔王城にいるとかは?」
ハッと閃いて、ギルを見る。
魔王はまさに、魔力と闇の体現者。その魔王が住まう城なんて、条件ズバリそのものではなかろうか。灯台もと暗しともいうし。
風と水の精霊は、よく来ると前にミアさんが言っていた。他の精霊が二体も来る場所だ、精霊が好む場所という点で申し分ない。
「それだ」と私は手を叩き――かけて、その手でそのまま頭を抱えた。
「――って、ああ……魔王城にいるなら、魔王城がそれを教えてくれますよね……」
忘れていた。魔王城は話せる建物だった。
上がった気持ちの分、ショックも大きい。俯いた私を、ギルは頭を抱えた私の手ごと、労るように撫でてくれた。
ギルが私をなでなでしながら、「ああ、でも」と何かを思い出したように零す。
「こっそり忍び込まれて、じっとされていたらわからないこともある。実際、水のはミアが目視で確認した方が早かった」
「⁉」
ということは、可能性が無きにしも非ず?
「ただ、闇の精霊は気紛れで好奇心旺盛。あいつの性格からいって、一所に留まっていることはあまり考えられないな。ウロチョロしてたなら、サラが言ったように魔王城が気付くと思う」
可能性が無きにしも非ずでも、限りなく低い……か。
「姿もそうだが、本当、猫っぽい奴だよ」
「ん? 猫?」
ギルの一言が何か引っ掛かり、私は記憶を掘り起こすように目を閉じて考えた。
暗くて狭い場所が好き。
温かい場所が好き。
気紛れで好奇心旺盛。そして、姿は猫……⁉
「ギル」
目を開けて、私はギルの膝をトントンと指で叩いた。
「ギル。私の部屋まで来てもらっていいですか?」
ギルがキョトンとした顔をして、けれどすぐに彼は「わかった」と立ち上がってくれた。