トリップしたら魔王の花嫁⁉ ~勇者の生贄にされそうだったので敵の敵は味方と思い魔王に助けを求めたら本当に来ました~
「これは当たりでしょ」
通路の突き当たり、ミニマップで見えた階段へと辿り着く。その階段を下りながら、私は独りごちた。
オプストフルクトに召喚された私は、あのときすぐに別の部屋に移された。着替えさせられるために。そこへは私が暴れると想定してか、毛布でぐるぐるに巻かれて運び出された。
だからそのとき通った場所は、わからない。けれど見えなくとも、階段を上った記憶はあった。
そして運ばれた別室から森へ連れて行かれるまでに、階段は下りていない。となれば、最初にいた部屋は地下と考えていいはず。
トッ
最後の一段を下りる。
これまでより少し広くなった通路に出た。
地下だから暗いかと思いきや、意外にも光が差し込んでいて明るい。石壁の高い位置に並ぶ小さな窓が、地上の光を多く取り込んでいるようだ。
一本道を暫く進む。地上から見える場所に窓があるということは、ここの地上はそれを怪しまれない場所――村の外れにあるのでは。それならオーブを窓から、トムヤンクンの誰かに持ち出させやすい。
何て運がいい――と思ってしまったのが、フラグだったのかもしれない。
「えー……」
私は目の前に出現した、行き止まりに足を止めた。
(また何かの仕掛けってことよね)
立ち塞がった壁に手を当て、私は目を凝らして違和感が無いか探った。
一本道だったのだから、この壁周辺かここに来るまでのどこかに必ず怪しい箇所がある。この通路は、オーブが在ったあの部屋に繋がっているはずなのだから。
「……」
先に回転した壁を見破ったせいか、私を見るトムヤンクンの視線(多分、ワクワクした感じの)が背中に突き刺さる。うぅ、プレッシャー……。
「うーん……この壁ではなさそう」
それなら、これより手前の壁か、あるいは床か。
取り敢えず、ゲーム中のパズル要素は嫌いじゃないが今は求めていないということだけは、声を大にして言っておきたい。
「あっ」
唸りながら通路を引き返して、三歩ほど。そこの床を踏んだ拍子に、私は探していた感触を見つけた。
ギュッ
ガコン
「開いた!」
壁際ぎりぎりの床、普通に歩いていては踏まないような位置に、その仕掛けはあった。押し込むように踏めば、連動して通路を塞ぐ壁が横にスライドするという造りらしい。
「よし、これで先に進め――」
ガコン
再び壁が通路を塞ぐ。その無情な音が、辺りに反響した。
「……」
ギュッ
ガコン
踏めば開く。踏めば。
……うん、落ち着こう私。『床スイッチ』なるものが登場した時点で、これは十分想定された事態だ、うん。
(えーと、こういう場合の対処法は……)
上に何かが乗っていないといけない床。ゲームでよくやるのは、木箱やら壺やらを運んで来て置く、または手持ちのアイテムを置くといったもの。
私の荷物は三冊の本だけ。これはオーブと交換で置いていきたいので使えない。
であれば木箱や壺を……と思うも、周りに見当たらず。
『妃殿下、何かお探しですか?』
私がキョロキョロしていたからか、見学に徹していたトムたちが一様に私の顔を見上げてくる。
「うん。何か重石になりそうなものをと――うん?」
トムに答えながら私は彼を振り返り――そこで目に止まった。重石が。
「……クン。ちょっとそこの床に座ってみて」
ぽてぽて
私の指示に従い、クンがそのずっしり体型を揺らしながらスイッチまで歩いて行って座る。
ガコン
「あ、開いた」
見事、壁は開いた。
「私たちが戻ってくるまで、クンはそこに座っていてね」
私の言葉に、クンがコクリと頷く。
隠し通路で安全とは思うが、こんな場所に一人は可哀想だ。早く用事を済ませて戻って来なくては。
私はトムとヤンを連れ、開かれた通路の先へと進んだ。
通路の突き当たり、ミニマップで見えた階段へと辿り着く。その階段を下りながら、私は独りごちた。
オプストフルクトに召喚された私は、あのときすぐに別の部屋に移された。着替えさせられるために。そこへは私が暴れると想定してか、毛布でぐるぐるに巻かれて運び出された。
だからそのとき通った場所は、わからない。けれど見えなくとも、階段を上った記憶はあった。
そして運ばれた別室から森へ連れて行かれるまでに、階段は下りていない。となれば、最初にいた部屋は地下と考えていいはず。
トッ
最後の一段を下りる。
これまでより少し広くなった通路に出た。
地下だから暗いかと思いきや、意外にも光が差し込んでいて明るい。石壁の高い位置に並ぶ小さな窓が、地上の光を多く取り込んでいるようだ。
一本道を暫く進む。地上から見える場所に窓があるということは、ここの地上はそれを怪しまれない場所――村の外れにあるのでは。それならオーブを窓から、トムヤンクンの誰かに持ち出させやすい。
何て運がいい――と思ってしまったのが、フラグだったのかもしれない。
「えー……」
私は目の前に出現した、行き止まりに足を止めた。
(また何かの仕掛けってことよね)
立ち塞がった壁に手を当て、私は目を凝らして違和感が無いか探った。
一本道だったのだから、この壁周辺かここに来るまでのどこかに必ず怪しい箇所がある。この通路は、オーブが在ったあの部屋に繋がっているはずなのだから。
「……」
先に回転した壁を見破ったせいか、私を見るトムヤンクンの視線(多分、ワクワクした感じの)が背中に突き刺さる。うぅ、プレッシャー……。
「うーん……この壁ではなさそう」
それなら、これより手前の壁か、あるいは床か。
取り敢えず、ゲーム中のパズル要素は嫌いじゃないが今は求めていないということだけは、声を大にして言っておきたい。
「あっ」
唸りながら通路を引き返して、三歩ほど。そこの床を踏んだ拍子に、私は探していた感触を見つけた。
ギュッ
ガコン
「開いた!」
壁際ぎりぎりの床、普通に歩いていては踏まないような位置に、その仕掛けはあった。押し込むように踏めば、連動して通路を塞ぐ壁が横にスライドするという造りらしい。
「よし、これで先に進め――」
ガコン
再び壁が通路を塞ぐ。その無情な音が、辺りに反響した。
「……」
ギュッ
ガコン
踏めば開く。踏めば。
……うん、落ち着こう私。『床スイッチ』なるものが登場した時点で、これは十分想定された事態だ、うん。
(えーと、こういう場合の対処法は……)
上に何かが乗っていないといけない床。ゲームでよくやるのは、木箱やら壺やらを運んで来て置く、または手持ちのアイテムを置くといったもの。
私の荷物は三冊の本だけ。これはオーブと交換で置いていきたいので使えない。
であれば木箱や壺を……と思うも、周りに見当たらず。
『妃殿下、何かお探しですか?』
私がキョロキョロしていたからか、見学に徹していたトムたちが一様に私の顔を見上げてくる。
「うん。何か重石になりそうなものをと――うん?」
トムに答えながら私は彼を振り返り――そこで目に止まった。重石が。
「……クン。ちょっとそこの床に座ってみて」
ぽてぽて
私の指示に従い、クンがそのずっしり体型を揺らしながらスイッチまで歩いて行って座る。
ガコン
「あ、開いた」
見事、壁は開いた。
「私たちが戻ってくるまで、クンはそこに座っていてね」
私の言葉に、クンがコクリと頷く。
隠し通路で安全とは思うが、こんな場所に一人は可哀想だ。早く用事を済ませて戻って来なくては。
私はトムとヤンを連れ、開かれた通路の先へと進んだ。