トリップしたら魔王の花嫁⁉ ~勇者の生贄にされそうだったので敵の敵は味方と思い魔王に助けを求めたら本当に来ました~
オーブ奪還
私たちの前に、壁の次に立ちはだかったのは、石の扉だった。
中央から左右に分かれて開きそうなデザインのそれは、案の定、普通には開いてくれず。けれど、そもそも取っ手が無い時点で、手動で開く可能性が低いのは想定内。一応試してみただけ。
本当はこの扉を見た瞬間、「あ、これは」と察していた。おそらく正しい開け方を。
予想される正解、それは――
「いい? トム、ヤン。『いっせーので』と私が言ったら押してね」
左右対称になっている扉の装飾を、同時に押すこと。
私は扉の左側で両手と片足を青い宝石の手前で構え、右を振り返った。
右側では、ヤンが両手をトムが前足をそれぞれ構えている。準備はOKのようだ。
「じゃあ、行くよ。いっせーの……でっ」
ピコンッ
どこか懐かしい効果音がした。
ゴゴゴ……
でもってありきたりな音もして、中央から分かれた扉は半分ずつ左右の壁に収まった。
ビンゴだ。やったね。でももう一度言っておくね。リアルでパズル要素は求めていません。もう他には要らないから、切に。
「あっ」
開いた扉の向こう、見えた景色に思わず声を上げる。
木製の本棚と戸棚と机。それから壁から下がったタペストリー。間違いない、私がこの世界で最初に見た――オーブが置いてあったあの部屋だ。
「……」
何となく、忍び足で廊下と部屋の境界を跨ぐ。
この部屋の窓は、向かって左側にしかない。先に明るい左を見て、次に右を見る。
(あった)
薄暗い中、ぼんやりとした光を放つ球体を私の目は捉えた。
私の目の高さよりやや低い位置、記憶の通りに台座の上にオーブはあった。
吸い寄せられるように近付いて、
「……っ」
突如聞こえた人の話し声に、私は思わず足を止めた。
中央から左右に分かれて開きそうなデザインのそれは、案の定、普通には開いてくれず。けれど、そもそも取っ手が無い時点で、手動で開く可能性が低いのは想定内。一応試してみただけ。
本当はこの扉を見た瞬間、「あ、これは」と察していた。おそらく正しい開け方を。
予想される正解、それは――
「いい? トム、ヤン。『いっせーので』と私が言ったら押してね」
左右対称になっている扉の装飾を、同時に押すこと。
私は扉の左側で両手と片足を青い宝石の手前で構え、右を振り返った。
右側では、ヤンが両手をトムが前足をそれぞれ構えている。準備はOKのようだ。
「じゃあ、行くよ。いっせーの……でっ」
ピコンッ
どこか懐かしい効果音がした。
ゴゴゴ……
でもってありきたりな音もして、中央から分かれた扉は半分ずつ左右の壁に収まった。
ビンゴだ。やったね。でももう一度言っておくね。リアルでパズル要素は求めていません。もう他には要らないから、切に。
「あっ」
開いた扉の向こう、見えた景色に思わず声を上げる。
木製の本棚と戸棚と机。それから壁から下がったタペストリー。間違いない、私がこの世界で最初に見た――オーブが置いてあったあの部屋だ。
「……」
何となく、忍び足で廊下と部屋の境界を跨ぐ。
この部屋の窓は、向かって左側にしかない。先に明るい左を見て、次に右を見る。
(あった)
薄暗い中、ぼんやりとした光を放つ球体を私の目は捉えた。
私の目の高さよりやや低い位置、記憶の通りに台座の上にオーブはあった。
吸い寄せられるように近付いて、
「……っ」
突如聞こえた人の話し声に、私は思わず足を止めた。