社長室に呼び出されたら、溺愛生活が待っていました
「明日からも一緒に過ごすんだ。君がちゃんと意見を言ってくれて嬉しいよ」

「それは最初の出会いが最悪だったので、遠慮が出来なくて……」

「じゃあ、あの出会いにも感謝しないとな」

そう言って、笑った社長はどこか子供のようだった。


「ああ、それと、婚約者なんだから俺のことは初樹《はつき》と呼べばいい。花重」


突然の名前呼びに心臓が早くなったのが分かった。


「……分かりました……初樹さん……」


私は何故か照れてしまって、小さな声で社長の名前を呼ぶ。

その様子を見て、社長はどこか満足そうだった。


「私もそろそろ仕事に戻りますね」


私は社長室を出ようとする。



「今までの昼食で一番美味しく感じた。花重と食べたから」



そう言った社長の言葉が、ドアを閉める寸前に聞こえた気がした。
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