社長室に呼び出されたら、溺愛生活が待っていました
「花重、こっちに来て」

そう言って、初樹さんは私を隣に座らせる。

「少しクマも出来てる……何で眠れなかったんだ?」

「あ、えっと……大したことじゃ……」

「花重が言ったんだろう?素直に話して欲しいと。俺だって一緒だ。これでも俺は君の婚約者なんだから」

そんな優しい言葉に私はつい弱音を漏らしてしまう。

「父は経営者としてとても優秀な人で……でも……」

私はそのままポツポツと父のことを話した。

「本当に父を心配してるんです。会社のことになると自分を蔑《ないがし》ろにしてしまう人だから」

その時、客間の扉がコンコンと鳴った。

母が初樹さんに挨拶に来る。

「初めまして、花重の母の美恵です。この度は娘と婚約を結んでくれてありがとうございます。夫は自室に居ますわ。まだ本調子ではなくて」

そう言って、母は初樹さんを父のいる部屋に案内する。
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