社長室に呼び出されたら、溺愛生活が待っていました
初樹さんがそっと私の髪から手を離し、席を立つ。


「そろそろ花重のお兄さん達に挨拶をしないとね」


そう言って、客間を出て行ってしまう。

初樹さんが部屋を出て行った後も私の心臓は速なったままで。

何とか心臓を落ち着かせて、壁に掛けられている鏡を見れば真っ赤な顔をしている。

その時、先ほどの初樹さんの言葉がもう一度頭をよぎった。



「君は初めて出会った時からずっと俺を救ってばかりいる」



私が覚えている出会いは、あの最悪の出会い。

それでも、きっと私と初樹さんはもっと前に出会っている。

私はもっと初樹さんを知りたいって思ってる。

時間が経っても落ち着かない心臓と赤く染まった頬、それに「もっと知りたい」という気持ち。

それが私の気持ちなことは分かっていた。


「うん、もう大丈夫……!」


私は自分の頬を両手でペチンと叩いた。
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