夜にしか会えない魔女は夜がキライ
「穂月ぃーーーーーーー!!!お客さんだよ、魔女を訪ねて来たお客さん!!!」

話を聞いてすぐさま自分の家ではなく穂月の家のドアを叩いた。

隣の幼なじみの家なんだ、あたしと月華ママはツーカーの仲で遊びに行けばすぐ穂月の部屋まで通してくれる。
ちなみにツーカーの仲って月華ママが言ってたんだけど意味はよくわかんない、たぶん言わなくてもわかるとかそんな感じ!

「…訪ねて来たお客さんって何だよ、そんなの俺じゃなくてばーちゃんに言えよ」

穂月の部屋のドアを開けると、勉強中だったみたいで机に向かってた。

「だって満月おばぁちゃんサバト行っちゃっていないんだもん」

「サバトじゃなくてただの井戸端会議だろ、魔女用語使うな」

はぁっと息を吐いて頭を掻いた。めんどくさそうな顔をされたのはわかったけど、これはぜひ穂月に聞いてほしい。

「それでねっ、お客さん!こっちこっち入って!」

手招きをして部屋に入るように促した、さっきの小さなお客さんの肩をとんっと押すようにして紹介する。

「小学校1年生のトキくんよろしくね!」

「………はぁ?」

さぁっと言って穂月の座るイスの前にトキくんに座ってもらって、その隣に同じように座る。

「よろしくって何をっ」

「猫!」

「は?」

「探してるんだって!」

ねってトキくんの方を向けばうんと頷いて顔を上げた。

「…猫がいなくなっちゃったんです、ずっと一緒にあそんでたのに急にどっか行っちゃって」

うるうると目を潤ませて、小さな口でゆっくりゆっくり声を出す。

「ここに…魔女がいるって聞いたんです、魔女と猫は仲良しだからって聞いて…」

穂月が教科書の隣に置いてあったカップを持ってごくんと一口飲んだ。たぶんあれはコーヒー、ふわふわと香りが漂ってるから。

「だから見付けてもらえませんか…?」

「……。」

「魔女さん!!」

「ブフッ」

あ、吹いたコーヒー。飲みながら聞いてるからだよ。

「…俺は魔女じゃないんだよっ」

「でもおねえちゃんがここに魔女さんがいるって…」

キッと睨みつけて来る。

あ、やばい!なんか怒られそう…!

「あ、あのね!違うのっ、これは穂月にしかできないことだよ!」

だからあわてて付け加えた。ここに来る前にトキくんに聞いたことを、それで穂月に聞いてほしいって思ったことを。

「いなくなった猫は黒猫なんだって!」
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