夜にしか会えない魔女は夜がキライ

night4.)

「これっくらいの真っ黒な猫なの!こんちゃん知らない!?」

「え~黒猫?見たことないなぁ」

「だよね~、黒猫ってあんま見たことないよね~」

学校でこんちゃんにも聞いてみたけどいい情報は得られなかった。
猫の移動距離ってどれくらいなんだろう、そんなに遠くには行けないと思うんだけどなぁ。

「黒猫探してるの?」

「うん、迷子猫なんだけどね飼い主さんが探してるの」

「そうなんだぁ、それは早く見付けたいね」

「うん、そうなんだよねぇ~…」

帰りの会の終わった授業後、部活へ行くこんちゃんと一緒に廊下を歩く。吹奏楽部のこんちゃんは音楽室だからグラウンドへ向かうあたしとは逆方向にはなるけど途中まで。

「見かけたら緋呂に言うよ」

「ありがとう、よろしくね!じゃあ部活がんばって!」

「うん、緋呂も!」

本当にちょっとそこまでだけど階段を上がっていくこんちゃんと下りて行くあたし、ばいばいと手を振って駆け下りた。

セーラー服から体操服に着替えないといけないからグラウンドに行く前に部室に、だけどその前にもう少し時間があるから…

「穂月大丈夫!?」

「保健室は静かにって言ってるでしょ!」

「巴先生ごめんね!穂月は!?」

「…大丈夫だよ」

シューっとカーテンを引いて、のそっと奥のベッドから起き上がった。明らかにだるそうで肩がいつもより下がってる。

「もう平気だから」

「えっ、そうは見えないけど…」

ふぅっと息を吐いて、起き上がるのもしんどそうだった。

「昨日遅くまで探してたもんね」

約束の門限もオーバーしちゃって月華ママにも怒られたし。

「ごめんね、付き合わせちゃって」

「いいけど…緋呂は?」

「あたし?あたしは超元気!」

朝からご飯おかわりしちゃうぐらい超元気!

グッと親指を立てて笑って見せた。

「羨ましいよ、本当」

「穂月はほんと病弱だよね」

「悪かったな、病弱で!」

この元気を穂月にも分けてあげられたら、いいんだけどね。

「月華ママまだ来ないの?」

「あぁ今日は用事があって少し遅れるって」

「そっか、じゃああたし部活行って来るからまた夜ね!」

ばいばいと大きく手を振って保健室を出た。
また巴先生に声が大きいって怒られちゃったけどそろそろそれも慣れっこだなぁ。いや、よくないけど。
< 12 / 79 >

この作品をシェア

pagetop