夜にしか会えない魔女は夜がキライ
「緋呂っ、大丈夫か!?」

「う、うん!あたしは!」

「そっか…!よかっ…た~」

「あぁぁっ、穂月!」

へなへなへな~っと壁を伝うようにして気が抜けたみたいに小さくうずくまっていった。猫を抱っこしたまま穂月の前にしゃがみ込んだ。

「穂月走って来た!?大丈夫!?」

「…保健室の窓から、帰ろうとしたら緋呂がっ…走っていくの見えたから…っ」

あ、見てたんだあの時…

それで心配してわざわざ…!

「すごい顔して」

「すごいは余計だよ!」

その自覚はなくもないけど!
必死だったし、夢中だったし、急いでたし!

「だから…何かあったんじゃないかと、…思って」

はぁはぁとさっきより息が上がって、何度も何度も大きく息を吸ったり吐いたりしてる。

そんな風になってでもあたしのところに、来てくれたんだ。

じーんとしちゃう、きゅぅって胸が鳴る。

「…ゴホ、ゴホッ」

「穂月っ」

穂月の背中をさする。

あたしの腕の中から離れた猫も寄り添うように、にゃ~と鳴いていた。


穂月は困ってる人を放っておけない、絶対助けてくれるの。

自分のことなんか顧みないで。


「大丈夫っ!?」

「マジで運動不足だ…」

ぜぇーぜぇーって詰まるような呼吸の音はどんどん苦しそうになって、声は消えていきそうで…

「あ、太陽…!!」

いくら校舎裏でも、その後ろは山だって言ってもそこから漏れる光はあるんだ。


ここにいたらダメだ!


てゆーかここまで太陽の下を走って来たんだよね!?

じゃあだいぶ光を浴びて…!

「穂月!ここから離れよ、今も光に当たってるから!」

「ちょっとくらい…大丈夫だよ」

「ダメだよ穂月!!」

あぁぁ~~~~っ 

えっとどーしよ、このままじゃ穂月が…!?

でもあたしだけでは…!

「緋呂ぉ~~~~~…!」

「こんちゃん…!!」

「足早すぎ…っ、全然追い付けないよ…!」

こっちもぜぇはぁしながらやって来た。

よかったこんちゃんも来てくれたんだ!こんちゃんも!!

「こんちゃん!誰でもいいから先生呼んで来て!」

「え!?」

「急いで早く!!」

「う、わかった…!」
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