夜にしか会えない魔女は夜がキライ
「あ、見て流れ星!」

シューッと星が流れた、絶対見てほしくて空を見ながら興奮気味に指を差して叫んだ。

緋呂(ひろ)、危ない!」

「わっ」

だけど上しか見てなかったから階段があることに気付かなくて。

「わ~っ、危なかった~!穂月(ほづき)ありがとう!」

「危なかった~じゃないよ!ちゃんと前見て歩け!!」

思いっきり踏み外してた。穂月が腕を引っ張ってくれなかったら落っこちてたと思う。

「街灯少ないんだ、せめて足元くらいちゃんと見とけよ」

「うん、次は気を付ける!」

「陸上出来なくなったらどうするんだ」

朝見緋呂(あさみひろ)、走ることが大好きで陸上部に入ってる中学3年生。エースなんて呼ばれちゃったりしてる。

「そしたら穂月が助けてくれるしね!」

こっちはお隣さんに住む十六夜穂月(いざよいほづき)、同じく中学3年生でちっちゃい頃から一緒にいるあたしの幼なじみ。

「今日めっちゃ空キレイじゃない?星がよく見えるよね!」

今度は階段の方へ行かないようにして地面と空と交互に見ながら歩いた。

「6月は星が見えやすい時期だからな、一晩中綺麗な星空が見えるよ」

「そっかー、…でもこれだけキレイに見えたら明日はいい天気だよね」

立ち止まって見上げる、街頭の少ない丘の上の公園は際立って星がよく見えるから。

「そうだな」

星いっぱいの空が少しだけ憎くて。

「…雨が降ったらいいのに」

梅雨入りには少し早いこの季節、早く来ないかなって待ち遠しくなる。

「そしたら穂月と一緒に学校行けるのにね」


穂月にはちょっとだけ不思議な力がある。

それは遠い昔、穂月のおばあちゃんのお母さんのお母さんがお母さんで…ってもう数えきれないぐらいずーっとずっと昔からの血が今も流れているらしい。


「降らそうか、雨」

フッと不敵に笑って、本当に叶うんじゃないかって期待させられる。

「さすが魔女!そんなことできるんだ!?」

「出来るわけないだろ、魔女にそんな力ないんだよ」

さっきまで合っていた視線をふいっと逸らされ穂月が歩き始める。

「つーか俺は魔女じゃないし」

だから後ろを追いかけてぽんっと背中を押した。


「魔女でしょ、魔女の末裔(まつえい)!」
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