夜にしか会えない魔女は夜がキライ
夜には体調も戻った穂月と黒猫を抱えてトキくんのお家へ向かった。

ぜーったい喜んでくれるよね~、よかったね黒猫ちゃんも。やっと会えるんだよ、大好きなご主人様と…


「その猫、捨て猫です」


「「………は?」」


一瞬何を言ってるのかわからなくて穂月とハモってしまった。トキくん家の玄関の前、家にも入れてもらえなかった理由が今明確になりつつあった。

「す、捨て猫とは一体…?」

「ぼくんちの猫じゃないんです、いっつも公園にいたからよくあそんでて。でも急にいなくなっちゃったから…どこ行ったのかなって」

「「……。」」

え、ずっと一緒に遊んでたっていうのは…
そーゆうことなの…?

あたしも穂月も声を失っちゃってなんて言ったらいいかわからなかった。

いや、あんなこの世の終わりみたいな顔で訴えてきたじゃん!あれ何だったの!?

「ほんとうは飼いたかったけどママだダメだって言うから」

もうママに説得された顔をしている。ママの言うことは絶対なんだ、すべてを受け入れてなんならスッキリした顔しちゃってる。

「だから、ごめんなさい」

ピシッとドアを閉められた。

にゃ~と黒猫が鳴いている。


………え?

え~~~~~~!?


じゃあどうすんのこの猫~~~~~~~~!?


「…仕方ないだろ、こうなったら」

「仕方ないの!?仕方ないで済ましちゃうの!?いいの!?」

トキくん家からは帰るしかなくて、猫を抱っこしたまま引き返して来た。夜道をとぼとぼ歩いて、行きはあんなに足取りも軽かったのに。

「よくはないけど、元々飼ってた猫を捨てたわけじゃないし。動物を飼うにはリスクだってあるんだ、簡単には飼えないんだから逆にスパッと諦めた方がこの猫にとってもいいことだよ」

「…そうかもしれないけど」

でも、じゃあ…
この子はどうなるの?

てゆーか、トキくん家の猫じゃないならどこの家の猫なの?


帰る家はないの…?


「!」


スッと穂月の手が伸びて来て、あたしのところからすくうように猫を抱えて行った。穂月がもふもふとなでるとにゃ~って正真正銘の猫なで声で鳴いた。あたしが抱っこするよりうれしそうだし気持ちよさそう。

「うち来るか?」

「え…?いいの!?」

「他に行くところないなら」

…穂月は困ってる人を放っておけないけど、困ってる猫も放っておけないらしい。

「ばーちゃんも母さんも猫好きだし、特に黒猫は」

さすが魔女一家…!!!

確かに満月おばぁちゃんなんて隣に黒猫いないと変な感じする!


でもね、黒猫も穂月にそう言われて心なしか顔がほころんだ気がしたの。


にゃ~って泣きながら穂月の頬をペロペロ舐めて。

穂月がそう言うなら、黒猫も安心だよね。

「今日からよろしくな、カラス」

「その名前は魔女が過ぎるよ!!!」




あたしはそんな魔女が大好きなんだ。
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