夜にしか会えない魔女は夜がキライ
「痛っ」

シャッと黒猫のカラスが穂月の手の甲を引っ掻いた。あたしが黒猫のカラスをなでようとしたら、それが気に入らなくて立てた爪が穂月に当たっちゃった。

「穂月大丈夫!?」

「あぁ…ちょっと当たっただけだから」

「血出てるよ!?」

どうやら黒猫のカラスはあたしのことが気に入らないらしい。

何さ!助けてやったのに!!
大村たちにいじめられてるところから助けたあげたのにさ!

てゆーか黒猫のカラスって紛らわしくない!?

「カラスすっかり穂月に懐いてるよね」

梅雨シーズンに突入した夜はむしむしと暑い。雨が降ったら涼しくなる日もあるけど、雨が降ったら穂月と夜のお散歩できないしこの季節は好きじゃない。

「うちにもすげぇ馴染んでるよ、よくあの薬草の匂い強いばーちゃんの部屋で寝てるし」

「猫って匂いに敏感って言うよね?薬草の匂いはいいんだ!」


…それってやっぱ魔女の使いだから?


なんて想像があたしの頭の中では止まらないけど。
黒猫のカラスだって穂月の肩にちょこんと腰かけるようにしてなんかもう本当、それにしか見えない。

「にしても今日暑いな」

「穂月長袖だもんね」

いくら陽が落ちたとしてもいつでも長袖を着ている、しかも真っ黒のシャツでこの暗闇じゃほとんど穂月見えない。
あと肩に乗ったカラス(黒猫)も暑いに違いない。

「なんか飲み物買って休もっか、暑いと疲れるよね」

さびれたベンチはあるし、種類は少ないけど自販機だってあるからね。

公園の隅っこにある自販機に飲み物を買いに向かった。こんな時のために毎日ジュース買うぐらいの小銭は持ち歩いてる。

「何にしよっかな~、やっぱ暑いから炭酸系かな~!?」

迷う、レモンもいいしブドウもいい。冷たいのをグーッて飲みたい。

「穂月は?何にするの、決めた?」

「あぁ」

ガタンッと自販機から落ちて来た。あたしが悩んでる間にすでにお金を入れていたらしい、しゃがみ込んで落ちて来た飲み物を取り出した。

BLACKの文字がデカデカと目立つコーヒーを。

「…どこまで黒好きなの」

「ん、何か言ったか?」

「ううん、穂月っていっつもコーヒー飲んでない?ほんと好きだよね!」

「まぁ…、別に」

「別に!?そんだけ飲んどいて!?」

やっぱレモンにしよ!レモンの方がスカッて感じするし!
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