夜にしか会えない魔女は夜がキライ
「しょーがないよね~」

家に帰って来てすぐお風呂に入った。

お湯たっぷりのお風呂は肩まで浸かれるから気持ちいい。ふぅっと息を吐いて、浴槽いっぱい足を伸ばしてもたれるように背中を預けた。

中学生の門限の平均は夕方7時らしい。

でも穂月は7時くらいからやっと外に出られるようになるから、少し遅めの9時が門限になってる。そんでうちのママも穂月と一緒ならいいよって、うちの門限も同じ9時に。

そりゃ他の子たちと比べたら長いんだけど、穂月と一緒にいられない時間だって長いんだもん。

浴槽の淵に頭を乗せて天井を見る。
お風呂の天井ってぼぉーっとするのに持って来いの景色してると思う。

「…大会、見に来てはくれないか」

陸上部の大会だもん、外だしグラウンドだし夏の太陽なんてうちらでも大敵だよ。

体育館でやる陸上なんてないしなぁ、あたし短距離だし。雨が降れば外に出られるけど、雨の日は大会が中止だしね。

どうしたって不可能…

「来てくれたらもっとがんばれるのに」

ブクブクとお湯の中に沈んでいく。目を閉じて視界を遮って。

穂月が来てくれたらなぁ、なんて。
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