夜にしか会えない魔女は夜がキライ

night2.)

6月、梅雨は好きじゃないけど体育祭があるからちょっとだけ好きな6月。

部活の大会も最後だけど、中学の体育祭だって最後だもん気合い入っちゃう!

「あたしリレーやりたいです!」

はいっ、と手を上げて返事をした。
部活の大会と違ってこれは緊張しないんだよなぁ、むしろワクワクするっていうかたぶん独特なあの空気感がないから。

「緋呂100メートルも出るんだよね、リレーも出るの?」

「リレーは絶対やりたいじゃん!100メートルは一応短距離選手だからねあたし!こんちゃんは何するの?」

「うーん…出来れば何もしたくないけど」

「これ学校行事だよ?」

担任の中野(なかの)先生の話を聞きながら隣の席のこんちゃんと黒板に書かれた体育祭種目一覧を眺めていた。
希望の種目へは立候補制で、定員オーバーなら話し合いもしくはジャンケンで決めるのが恒例の体育祭種目選び。

たぶんどっちも出られると思う、あたし走るの得意だし。

だから自分の出場種目よりも気になるのはー…


窓際の席でぼぉーっと外を見ている穂月のことで。


みんなはワイワイ言いながら手を上げたり、前に出てジャンケンしたりしてるのに、関係ない顔してただ座ってるだけで。

ううん、関係ないって思うしかないのかもしれない。関係ないことなんてないけど、穂月だって…

そんなつまんなそうな顔、誰も気付いてないのかなぁ。

「十六夜くん」

あ、中野先生も気付いてたっぽい。

「保健室、行っててもいいですよ」

……。

賑やかな教室で、中野先生がこそっと言っていた。

あたしが言ってほしいと思ってたことと違った。

穂月が静かに立ち上がって、後ろから教室を出て行く。

振り返ってみたけど目を合わせてはくれなくて。

なんであたしがこんな気持ちになるんだろう。

穂月だって同じクラスじゃん、参加できなくても…
ここにいていいのに。いてほしいのに。
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