夜にしか会えない魔女は夜がキライ
授業終わりのチャイムが鳴ったらすぐに教室を出て保健室へ走った。走らないと10分の放課の間に戻って来るのは厳しいから、先生に見付からないように階段を駆け下りた。

「穂月…!」

「朝見さん!ここでは静かにって…っ」

いつも通り巴先生には怒られたけど、そこからあたしの勢いは失速しちゃった。


保健室のドアを開けた瞬間、穂月が笑ってたから。

さっきまであんなにつまんなそうな顔してたのに、楽しそうに窓の外を眺めながら…   


あたしの知らない女の子と喋ってた。


……、…。

………。

…誰? 


誰!?


「あ、緋呂」

その顔のままこっち見ないでよ!
普段そんなキャラじゃないじゃん!

「私行くね、次の授業には出ようと思うから」

「うん、じゃあね吉川(よしかわ)さん」
 
「ばいばい、十六夜くん」

よ、吉川さん…!?十六夜くん!?

もうすでに名前を知ってる仲なの…っ!?

吉川さん(推定)が巴先生にぺこりとあいさつをして保健室を出て行った。

保健室にいたってことは今まで体調がよくなかったんだろうけど、保健室に穂月以外の人がいるのも普通にあることだし、でも…


仲良さげに喋ってるのは初めて見た。  


「今の誰…?」

「隣のクラスの吉川さん」

隣のクラス…じゃあ、あんまりわからないかも。隣のクラスに友達いないから遊びにいくことないし。

「と、友達なの?」

「別に友達ってわけじゃないけど、会うから保健室(ここ)で」

「へぇ…そうなんだ」

勝手にあたしの前にいる穂月がすべてだと思ってた。

学校じゃあたしぐらいしか喋らないし、部活もやってないし、家でもそんな感じだし。


へぇー、そっか、そうなんだ。


あたし以外にいたんだ… 



女の子、いたんだ。



真っ黒なロングヘアーが艶やかだった吉川さん。
どんな話をするのかな…
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